遠藤が豊ノ島戦で勝利した意義は、今場所で最も大きい。その相撲内容から透けて見える、遠藤の現在地。
遠藤が、豊ノ島に勝利した。
序盤戦での横綱大関と苦しい闘いを経て、前頭筆頭として4勝6敗。
初の上位総当たりの番付で本当によくやっていると言える成績だ。
さすがに横綱大関との対戦はどうにもならなかったが、
稀勢の里に勝った後は玉鷲、琴欧洲、そして大砂嵐に勝ち、
健闘と言って良い形になった。
注目度と期待度が増す中、プレッシャーに潰されず
むしろ周囲の目を力に変えているような錯覚を覚えるほど日々進化し、
進化の結果を絶えず土俵上で出していることは
本当に凄いことだと思う。
ただ、この成績に対して厳しいことを言うとすると、
遠藤の勝ち負けには明確な傾向が有るのだ。
遠藤が負けた力士を考えてほしい。
鶴竜。
日馬富士。
白鵬。
琴奨菊。
豪栄道。
そして、栃煌山。
答えは単純だ。
そう。
強い力士には敗れているのである。
だからこそ、今日の一番には本当に意味が有ると私は思う。
何故か。
それは遠藤が自分の相撲で、今までで一番強い力士を破ったからである。
これまで遠藤が破った、最上位番付力士は稀勢の里だ。
だが稀勢の里との一番は、本来敗れていた相撲だ。
それを、遠藤特有の粘りで勝ちをもぎ取ったわけだが、
決してそれは自分の相撲だったという訳ではない。
そして、その次に高い地位の力士は琴欧洲だ。
大関陥落した琴欧洲は番付的には関脇だが
満身創痍で自分の相撲が取ることが出来ない状態だった。
更にその次を考えると、もう魁聖や玉鷲だ。
つまり、遠藤は今のところ三役の常連力士と前頭上位の
常連力士に勝った経験が無かったのである。
横綱・大関・そして関脇には敵わない。
そして、小結常連格たる豊ノ島との比較になるとどうなるか?
というのが、今日の取組のポイントだった。
思い出してほしい。
今日の遠藤は小結にして4勝6敗という、
地位としては納得感の有る成績を残している豊ノ島に対して
正面から撃ち合い、そして退けたのだ。
考えてみると遠藤自身も4勝6敗でこの取組を迎えていた。
豊ノ島とは対戦相手がほぼ同じ。
直接対決の結果もさることながら、10日間の成績も互角。
ということは、遠藤は小結の豊ノ島と互角だということである。
付け加えると、小結の松鳳山はここまで4勝6敗。
やはり、遠藤は彼らと勝負になるところまで成長したのだ。
関脇までの力士が相手だと苦戦は必至だが、
小結以下であれば自分の相撲で勝てる。
これが、遠藤の現在地なのだ。
デビュー一年の力士としては素晴らしいことだ。
だが、今の実力を維持するだけでは駄目なことも事実である。
私が今日の相撲を凄いと思っているのは、
あくまでも短期間で成長した力士が小結クラスを破ったからであって、
そこに将来の大関・横綱を期待させる成長曲線を見出したからだ。
九州場所に足踏みした幕内下位を、初場所ではほぼ無傷で突破した。
そして大阪場所では、今まで足踏みしていた幕内中位クラスの力士を
ものともせずに破っただけでなく、小結を相手にも勝利した。
不可能を短期間で可能にする遠藤だからこそ、我々は期待する。
となると、次のターゲットは関脇。
つまり、豪栄道と栃煌山ということになる。
先日の記事と繰り返しになるが、
関脇以上の力士に対して今の遠藤は、格下である。
これを対等な立場で破るには、まだ試行錯誤が必要だ。
その試行錯誤の中に人間的な苦悩が有り、
その過程を共有することで、我々は遠藤を唯一無二のヒーローと認識する。
ヒーローに成長する過程で、どのような対戦が待ち受けているのか。
豊ノ島を乗り越えたように、豪栄道と栃煌山を乗り越える日も
そう遠くないのかもしれない。
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