一年前に初めて稽古見学に行った私が、久々に北の湖部屋を訪れてみた。Part3 一心龍編

北太樹さんが高根君について指導している傍ら、
土俵では三段目以下の力士達が申し合いをしていた。
ご存知の通り、申し合いでは2人の力士のうち
勝った方が残り、基本的には敗れた力士が去る。
そして周囲を囲む他の力士が競うように手を挙げる中、
勝った力士は次の相手を選ぶ。
そのため、強い力士は取り続けることになる。
ちなみに、どの力士が何回参加したかは
北の湖部屋の場合はメモが付けられているため、
恐らくある程度は均等になるのだろう。
今申し合いを行っている力士の中には、
現役最重量力士の大露羅さんも居る。
この中に混ざると確かに強いが、負ける機会も有った。
始まるまではあの体躯なので、だれがどうやって
大露羅さんに勝つのだろうかという想いで観ていたのだが、
その誰がどうやってということは徐々に明らかになった。
つまりは絶えず攻められた時、なのである。
大露羅さんでも上手くいかないことが有るのが、
申し合いなのだと気づかされる。
では、この中で一番優位に闘っているのは一体誰か。


長身で細身の力士が居る。
前みつを取ると非常に強い。
相手の体勢が崩れる。
揺さぶりながら前に出る。
土俵を割る。
うん。この形だと非常に強い。
だとすると、相手は前みつを取られないように
突き放しに来るか、自分の形に組んで
相手に攻めさせないような対策を取る。
工夫しているのは見て取れる。
だが、技術が足りないせいなのか、
身体能力が足りないせいなのか、
この試みは大抵の場合失敗に終わる。
つまり、前みつが取れてしまうのだ。
この大体勝っている力士。
その名を、一心龍という。
昭和58年生まれのこの力士、今年で31歳になるベテランだ。
何と言っても思い出深いのは、私が右も左も分からぬ中
稽古見学に行ったときに懇切丁寧に教えてくれた力士だからである。
力士というより同僚のような感覚で、
ああ、このような人が居るのかと驚いた。
そして良い意味で力士らしからぬ良識的な対応に対して
北の湖部屋が人間教育が行き届いていることを実感したのだ。
一心龍という力士には珍しい記録が有る。
28歳2ヶ月で初めて幕下に昇進しているのだ。
これは歴代9位なのだという。
つまり何が言いたいか。
一心龍さんは、ちゃんこ番で終わる気は更々ないのである。
以前も触れたが、幕下は諦められない力士が集うが
三段目となると惰性や妥協で角界に残っているということも多い。
それは体型を見ても、取組を見ても伝わってしまう。
一心龍さんは、そうではない。
一年前と比べると少し体が小さくなったような気もするが、
稽古内容については上回っているように思えた。
考えてもみると、天一さんも、吐合さんも
一心龍さんよりも年上で、彼らもまた幕下で現役を続けている。
このような部屋だからこそ、一心龍さんが現役を続けているのもまた
必然なのかもしれない。
前みつを取り続け、土俵に残り続ける一心龍さんを見ながら
私はそんなことを考えていた。
続く。
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