【スポナビ+プレゼンツ】幕下相撲評論​家が、巨人の育成シス​テムにカチ上げ!知ら​れざる「育成選手」と​「幕下相撲」の共通点​、そして、決定的な違​いとは?

大相撲とは、世界で一番平等なスポーツである。
そして、前時代的なカーストを持つスポーツでもある。
前者に関して言えば、勝てば勝った分だけ評価され、
成績は地位という形で2か月後に反映される。
監督の意向やジムの強弱が出世に影響するスポーツと異なるのはこの点だ。
例えば遠藤は1年余りで100人余りの力士をゴボウ抜きして
大相撲のトップ10に迫るところまで地位を上げた。
十両まで上がれば、月給は100万円を超える。
部屋が与えられる。
そして、付き人が付く。
だが十両以下の力士となると、後者の悲哀を見ることになる。
月収は10万円程度。
大部屋での生活で、プライバシーなど存在しない。
服装や履物すら、制限が有る。
しかも彼らは「力士」ではなく「力士養成員」と呼ばれ、
AKBで言うなれば研究生、ジャニーズで言えばJr.扱いを受けることになる。
優しくも厳しいのが、大相撲である。
私は一人前と半人前の間で夢を見て、
実現する者と破れる者の圧倒的現実が交錯する
幕下という地位に魅せられ、
「幕下相撲の知られざる世界」を3年余り書き続けてきた。
だが、ここで私は一つの疑問を抱いた。
他の競技はどうなのだろう?と。
私は相撲を愛するがために、あまりにも相撲目線に成り過ぎている。
他の競技の幕下相撲と言えるポジションを見れば、
相撲の良さ、いや、相撲だけの良さが再認識できるのではないか?
逆に相撲の門外漢に、相撲について論じてもらう。
そうすることで、私には全く分かり得ない相撲の良さに気付くことが出来るだろう。
そしてこの方もまた、新たな視点で自分の愛するスポーツを観られることだろう。
そこで私は他流試合を申し込むことにした。
その相手は「プロ野球死亡遊戯」である。
野球を、巨人を論じれば右に出る者は無い。
ランキングを見ればいつも一位。
そう。
スポーツナビが産み落としたモンスターである。
私は幕下相撲流儀で野球を語る。
そして、死亡遊戯は死亡遊戯流儀で相撲を語る。
これは、ブログ界の異種格闘技戦だ。
さぁ、どうしたものか。
私は私の流儀で野球界の幕下相撲を見つけてようではないか。
そこで私は、野球界に目を向けてみた。
二軍?
二軍については以前斎藤佑樹が西武第二球場に登場したときに
幕下相撲との違いについて論じたことが有るので、
それを参照頂きたい。
社会人野球?
アマチュアの立場で、職を持ちながら野球を続けているため
目指す方向性が少し異なる。
夢の一歩手前で収入があまり無い中、
プロ野球に近いところで理不尽な扱いを受けながら
前だけを見て野球を続ける存在。
そんな者が果たして居るのだろうか?
私は偵察のために「プロ野球死亡遊戯」を読みながら、
そんなことを考えていた。
すると、一つの発見をした。
育成選手。
プロ野球に於いては支配下登録選手が70人という制限が有り、
この範囲の中で選手を保持する必要が有る。
しかし、不況などの影響から社会人野球が衰退の一途を辿っており、
有望選手の育成を目的として導入された制度である。
私自身、この育成選手というのが通常の支配下登録選手よりも
かなり厳しい立場であるという認識が有ったので、
幕下力士と照らし合わせてその状況を確認してみたい。
まずは給料。
幕下力士は年収がに100万円程度だったのだが、
育成選手の年棒の下限は240万円。
そして、支度金という形で入団時に300万円が支払われる。
一軍選手の平均年棒が3500万円ということを考慮すると、
大変な格差である。
そして、大相撲が衣食住を保証されるのに対して
育成選手に関してはそれもかなり限定的だ。
育成選手として野球界に身を置くことは、
決して何かを成し遂げたわけではなく、
あくまでも半人前だということがこの待遇からも分かるだろう。
そして、理不尽な扱い。
幕下以下の力士は十両以上の関取とは
着物も履物も異なる。
そして、プライバシーなど何も存在しない、
大部屋での生活を余儀なくされる。
これらは相撲界の前近代的な文化に端を発するもので、
2005年から始まった育成選手という制度に於いては
不平等を奮起の材料とすることは考え難い。
そう私は考えていた。
しかし、育成選手にも理不尽と言える待遇が有る。
背番号だ。
支配下登録選手の背番号は2桁までなのだが、
育成選手に関しては3桁の数字である。
背番号を見るたびに、自分が半人前であることを
否応無しに自覚させられる。
場合によっては0から始まる番号ということも有る。
電話番号のような番号を背負う想いは如何なるものなのだろうか。
そして、その狭き門である。
相撲界に於いて一人前たる十両以上に昇進する力士は
日本人限定だと6.4%。およそ15人に1人といったところだ。
対する育成選手に於いては支配下登録される確率は
巨人の日本人で育成スタートした選手限定だと26%。
およそ4人に1人。
相撲との比較だと多いという捉え方も有るが、
相撲が入門を希望した全員がスポーツエリートで無い点を考えると
全員が精鋭であるにも関わらず4名中3名がスタートラインにさえ立てずに
諦めていく現状は厳しいと言えるだろう。
しかも、だ。
育成選手に残されたタイムリミットは非常に短い。
巨人の日本人で育成スタートした選手限定だと、
戦力外通告を受ける平均年数は、なんと3年。
つまり3年の中で結果を残さねば、全てを失う。
相撲に関して言えば、年齢制限は存在せず
本人が辞めると言うまでいつまででも続けられる。
四十代後半でも、序二段で取り続けた力士も過去に存在している。
門戸の狭さとチャンスの機会を考えると、
共に同じ程度であると言えるだろう。
今のところ、幕下相撲と育成選手は
それぞれ共通した厳しさが有ることがお分かり頂けただろう。
だが、私はここで一つ育成選手独自の厳しさが有ることに気付いた。
そう。
育成選手は、既に全員が精鋭だという点である。
そもそも野球というのは競争率が非常に高い世界である。
その中でプロに手が届く、もしくは少し力が足りないかもしれないが
将来的にはその可能性が有る存在ということで考えると、
地元や学校内ではスーパーエリートなのである。
巨人に入団した育成選手の経歴を見てみよう。
広島工業。
横浜高校。
明治大学。
これはほんの一部である。
彼らがもし、単なる無名の存在で何も失うものが無いのであれば
ハイリスクハイリターンの決断に対してさほど驚くことは無いだろう。
実際相撲に関して考えてみると、中卒や高卒が大部分を占めており
しかもその大部分がその後の将来が保証されていない名も無き存在だ。
根無し草が輝かしい世界に夢を見て
夢に殉じていくというストーリーは、儚くも美しくもある。
そしてそれは、よく聞く話だ。
相撲だけではない。
音楽であっても、演劇であっても、漫画であっても、
その世界の頂点を目指す者は、その殆どが最初は根無し草に過ぎない。
だが、野球界は違う。
高校であれば甲子園が有り、甲子園を目指す学校の
中心選手となれば地元でも大変な有名人である。
周囲の期待を一身に受け、寵愛を受け、
一挙手一投足を常に注目される。
同窓会になると居なくても話題の中心に成るのが彼らなのである。
だからこそ、高校を卒業すれば大学野球に行くことは出来る。
大学を卒業すれば社会人野球に進むことは出来る。
そしてそれは、一生を保証するための安定に向けた道だ。
親も、先生も、このような道を勧める。
先行きが見えにくいとよく言われる2014年に於いて、
安定への道は光り輝いて見えるからだ。
繰り返しになるが育成選手という選択肢は、
理不尽で、リスキーで、金銭的にも肉体的にも大変苦しい。
9年の歴史を積めば、そんなことは誰でも分かる。
だがそれでも、彼らは育成選手に成るのだ。
安定よりも、夢にこそ光を見る。
これこそ、凡人がスポーツ界に非日常を求める動機だ。
安定とはありふれた日常であり、
そこから背を向けて明日無き戦いに身を投じる。
育成選手というのは、大相撲にも存在しない
過酷な決断をした者達のフィールドなのである。
相撲と野球。
幕下相撲と育成選手。
共に同じ厳しさが有る。
そして、異なる厳しさも有るのだ。
私は川崎市に住んでいる。
ジャイアンツ球場まで、およそ30分の距離だ。
一度あの坂を登って、彼らの生き様見ることも悪くない。
そう思ったのである。
◇お知らせ1◇
「プロ野球死亡遊戯」様の、今回のコラボレーション記事です。
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◇お知らせ2◇
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