現役最高齢力士は、旭天鵬ではない!?幕下以下の力士が自らに見切りを付けることの重みを考える。

突然ですが、問題です。
現在現役最高齢の力士は誰でしょう。
ここで旭天鵬と答える方も居るかと思いますが、これは不正解。40歳の旭天鵬は関取最高齢だが、現役最高齢ではない。ちなみに現役力士の中では4位だ。
では、あと3人はどのような力士なのか。立浪部屋の華吹、出羽海部屋の出羽の郷、北の湖部屋の北斗龍がトップ3だ。いずれも学年で言えば昭和45年生まれの世代というのが奇妙なな縁なのだが、彼らの特徴は現役の大半を幕下以下で務めていることである。出羽の郷には1場所だけ関取経験が有るが、華吹と北斗龍は最高位が三段目だ。現役時代の成績は現役続行に於いて勘案されないのが大相撲の世界なのだ。
しかし、これが関取として実績を残した力士となると話は別で、成績が上がらなくなれば周囲から引退という声が出てくる。また力士としのプライドも有るので、大関経験者の多くは幕内、関取期間の長い力士は一人前たる十両を一つのボーダーラインとして進退を決める。
彼らの立場はプロ野球選手やJリーガーと似ている。現役を続けたくても、居場所が無ければ身を引かざるを得ない。実績有る力士が残ることを選択しないのが幕下以下という地位なのである。幕下でも現役を続行した垣添のような力士は基本的には例外で、この辺りは垣添の著書「美しい黒星」を参照していただきたいのだが、自分の意志とは裏腹に競争社会の原理によって現役生活を強制終了することになる。
では、幕下以下だとすればこれはどうなのか。
現役続行は本人の意志に委ねられるのだ。
彼らのモチベーションはそれぞれ異なる。
関取になること。
番付を一つでも上げること。
部屋の力士をサポートすること。
だが、たとえ鬼籍に入るまで現役続行が可能とは言っても誰もそれをしたことは無い。相撲界にジャイアント馬場は存在しないわけだが、これは当然将来の生活という事情が関与する。幕下以下では収入がフリーター並みであり、将来のことを考えれば収入を得る手段を確立せねばならない。相撲を愛していても、部屋を愛していても、そこには越えられない壁が有る。関取を永く務めた力士は相撲界から戦力外通告を受けるわけだが、彼らは自らに対して戦力外通告をせざるを得ないのである。
一部の例外を除き、力士の大半がこれまでに相撲しか経験していない。力士にとって相撲とは全てである。彼らは自分が力士だからこそ注目を集められることをよく知っている。力士というだけで写真をせがまれ、赤ん坊を抱き、歓待を受ける。だが彼らは力士でなくなれば、力士としての自分ではなく、裸の自分として生きていかねばならない。ある意味で彼らは力士であることに守られているのである。これは想像以上の恐怖である。
力士ではない自分は何が出来るのか。
そして、何がしたいのか。
何の為に生きるのか。
これまではその全てが相撲だった。しかし相撲という軸を失った時に、彼らは何を支えに生きれば良いのか。そしてその支えを作ることこそ、自らの将来を切り開くことに繋がる。
力士として前に進むこと。
そして、一人間として将来を切り開くこと。
この二つの結論が力士として現役を続行することであれば、相撲をすれば良い。力士として現役を続け、加齢と共に衰え、自分の実力と限界が見えた時に二つが一致しないという結論を自ら下さざるを得ない時がやって来る。これほど残酷なことは無い。だからこそ私は、力士を辞めるという決断をした力士全ての幸せを願っている。彼らは皆、強い人間なのだ。相撲部屋とはアスリート養成場ではない。人間教育の場なのだと私は思っている。
ここで培った我慢も、一所懸命の精神も、男芸者としての周囲に対する配慮も、他の社会人では経験できない貴重な体験である。社会経験は少ないかもしれない。だが、彼らにしか出来ないことが確実に有る。
だから、自分に見切りを付けた時こそ、
力士を務めたことを誇りに思って欲しい。
そして、難しい決断をしたことも誇りを持って欲しい。
大相撲とは、やはり凄い世界なのだから。
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