アクロバット力士:宇良の将来性は如何なるものか。学生力士は伸びしろが無いという見解を覆す、前例なき急成長に期待する。
宇良が幕下昇進初めての場所で、連勝している。
ご存知の方も多いと思うが、宇良というのは関西学院大学出身で、去年「マツコ&有吉の怒り新党」で紹介された、アクロバティックな相撲を取ることで一躍有名になった幕下力士である。
居反りに伝え反り。アマチュアでも実績有る力士を相手に波乱を演じ、一躍有名になった。その辺りについては過去の記事を参照していただければと思う。
過去の宇良に関する記事はこちら。
宇良はその相撲を観ると、誰もが引き込まれてしまう。そういうカリスマ性を持った力士だ。里山や石浦の持つ形とは異質の、古臭い表現だと「宇良マジック」と表現されるような取口である。何が起きるか分からない。今日はどんな相撲を取るのか。そういう期待を否応無しに抱かせるのだ。
下位でもこれほど注目される力士は、私は他に大露羅くらいしか記憶に無い。当然大露羅のそれとは理由がかけ離れている訳だが、少ない観客をロック出来るのは相撲内容が魅力的だからということに他ならない。
注目を集めることは当然分かる。
私も序盤の土俵では宇良の取組を心待ちにしている。
とはいえ楽しい相撲ではあるが、強い相撲かと言われると答えに窮してしまう。その将来性について聞かれることは有るが、期待を抱く相手に対してシビアな回答をするのも申し訳ないので、これまでは濁してきたのが宇良の実情だった。
だが、その印象について答えを変えたいと私は思っている。
宇良は関取昇進出来るのではないかという認識になりつつあるのだ。
そもそも宇良は、以前も書いたように昨年の全日本学生相撲選手権でベスト16だった力士だ。つまり、その時点では宇良と同じないしはそれ以上の力士が学生相撲ですらあと15人は居たということである。この実績だと普通はプロ入りに二の足を踏むものだ。
例えば希善龍はアマチュア時代に全日本でベスト16という実績が有る。だがこれはしばしば「実績が無い」と評されるもので、そういう希善龍が時間を掛けて関取になったからこそ素晴らしいのである。
5月場所に大輝を破った時、大波乱だと私は思った。しかし幕下で5連勝を記録した今は、自信を持ってその将来性を論じることが可能だ。1年前にアマチュア界で特別でなかった宇良が、幕下でも勝ち続けられるのだから。冷静に考えてみると、成長曲線が普通ではないのである。
学生相撲出身力士に対して期待を抱きづらいのは、入門したての頃からの伸びしろがそれほど無いことが多いからだ。前相撲から連勝を重ねて短期間で幕内まで昇進し、その後幕内下位で定着してしまうという力士をここ数年果たして何人見てきたことだろうか。幕内であればまだいい。十両で定着する力士も数多く存在するし、幕下に呑まれ浮上のきっかけをつかめない力士も多い。学生出身であるにもかかわらず、1年でここまで成長する力士というのは大変珍しい。となると、その先もと考えるのは自然なことだ。
更に私は、実に信じ難い話を耳にした。
宇良は大学2年まで65キロ級の力士だったそうなのだ。
現在宇良は117キロ。
3年でおよそ50キロ増量したことになる。
入門したての叩き上げの力士が体を作るのとは事情が異なる。しかも、190センチ60キロの少年が短期間で体を作ったのではない。20歳と相撲界ではそこまで若くない宇良がそれをやったのだから、驚きだ。
身体を変えれば、当然出来ることも変化する。アクロバティックな可能性は限定され、代わりに重さに対する対応力が向上する。3年でスタイルを大きく変更し、しかも実績を積み重ねている。
そう。
宇良の成長は単なる成長とは大きく色合いが異なるのである。
常識を疑え。
宇良の相撲と成長を見ると、そんな言葉を思い出さずには居られない。九州場所と、今後の活躍に期待である。
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