2016年の全日本学生相撲選手権の知られざる世界。中編。

全日本学生相撲選手権。
その名の通り、学生相撲の頂点を競う大会だ。
大相撲で売り出し中の正代も、御嶽海も、北勝富士もこの大会を制している。有望力士の登竜門としての意味合いも備えた大会をだと言えるだろう。トーナメントを勝ち抜くための相撲を経て、彼らは強くなった。次の御嶽海は一体誰なのか。この日は団体戦が行われていたのだが、そんな目で私はこの大会を観ていた。
学生相撲はとにかくテンポが早い。
一番。
また一番。
仕切ったらすぐに取組が始まる。
大相撲の感覚で取組終了後にタブレットや携帯を操作すると、顔を落としている間に歓声が起こっている。これはいかんと顔を上げるともう取組が終わっているのである。幕下以下でもこんなに早く相撲が始まることは無いので、慣れるまで戸惑う。こんな違いも学生相撲には有るのだ。
だが、私は一つ気づいたことがある。
それにしては、決着が早いのだ。
何故こんなに相撲が早いのか。開始数秒で終わることも多いのが相撲という競技の特徴だが、攻防が有れば分単位の決着になることもある。しかし彼らの取組の多く、いや大部分が数秒で終わる。
これは一体どういうことなのか。
私は彼らの取組の特徴を考えてみた。
すると、二つのポイントが浮上した。
まず出場者の多くが、非常に相撲がうまいことである。
比較するのが適当かは分からないが、大相撲で序二段や三段目を観ていると思うのが、荒削りなところだ。攻め手が少なく、そして攻められた時に対処が出来ないことが多い。無理やり直線的に攻める。その攻めを受ける。力と力の闘いとも言えるのだが、見方を変えると技量が無いとも言える。だから面白い相撲も多いのだが、そういう側面があることも事実だ。
一方でこの日の国技館は、荒削りという印象の取組はあまり無かった。立合で主導権を取った選手が相手の嫌がる定跡を踏み、形を作った上で攻め、土俵際でも誤らずに攻め続ける。そういう洗練された相撲が多かったのだ。
だからだと思うのだが、私はこの日2時間程度の観戦だったのだが、飽きずにノンストップで取組を見続けることができた。これは大相撲の下位の取組では有りえないことである。大相撲の場合、朝からの観戦を躊躇うのは体力的な問題もあるが、取組の質の関係で飽きてしまうことがあることも事実だ。
そして彼らの取組の多くが、素早い攻めで構成されてるということだ。
具体的に言えば、彼らの多くは下から突き起こしていくか、前を捌いていくか。この二つの取組に別れる。立合の攻防が重要なので、かつてほどではないが駆け引きも行われる。この駆け引きの感じが私は大変苦手だったのだが、近年は解消されつつある。だが、主導権を取るための闘いは異なる形で展開されている。
素早い攻めは観ていて楽しい。そして、立合に大相撲とは異質の緊張感があるので、目が離せない。取組が終わるとすぐに次の取組が始まる。そしてまた、緊張感溢れる立合が待っている。
素早い相撲が多いということは、四つの相撲があまり観られないという捉え方もある。四つでじっくり形を作るのは、大横綱の系譜の一つだ。取りこぼしが少なく、劣勢でも逆転の可能性を多く残しているが特徴と言えるので、15日をトータルで見た時に有利なスタイルであることは間違いない。
素早い相撲はそういう意味で言えば、トーナメントや団体戦を勝つのに適していると言えるのかもしれない。一度勢いに乗ると誰も止められない。相手がどうこうではなく、敵は自分自身だ。
これは、もう一つのエンターテイメントだ。
学生相撲には学生相撲の良さがある。
是非はある。
大相撲への適応という点は、別の議論だ。
だが一つ言えるのは、学生相撲は楽しいということだ。
別の楽しさがあることに気づいた時、私は少し楽になれた気がした。
だが学生相撲には、もう一つの楽しみがあった。
それも幕下を愛する私にとって一番の大好物と言える楽しみが、である。
続く。
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