権威だけの組織は要らない。横綱審議委員会よ、稀勢の里を止めてくれ。
もしかすると、彼らは一番良い仕事をしたかもしれない。
ニュースを見た時に、私はそう思った。
そう。
横綱審議委員会が、怪我から立ち直れずに居る稀勢の里に9月場所の休場勧告をしたのだ。
確かに私は考えていた。一体誰がどう言えば稀勢の里は休むのだろうか。本場所で自分の相撲が取れないということを露呈しなければ、休場という選択をしないのではないだろうか。と。
しかし、それではいつまで経っても怪我は快方には向かわない。差せてもおっつけられない。左が生命線の相撲なのにもかかわらず、その左が使えないのだ。ハッキリ言って致命的だ。
出場を続ける限り、稀勢の里が道を切り開くには二つしか方法は残されていない。出場しながら治して左を復活させるという選択と、左に頼る相撲から脱却して新たな稀勢の里を構築するという選択だ。
だが、2場所の出場で両方が難しいことが明らかになってしまった。新たな相撲が短期間で作り上げられないのだとすれば、もう治す以外に方法が残されていないではないか。それでも稀勢の里は、出場することで横綱としての責任を全うしようとしている。
出場すること。
稀勢の里の相撲を取り戻すこと。
この二つを両立できないことは誰の目にも明らかだ。誰かが稀勢の里を動かさねばならない。相撲界の宝を、綱の責任の下に潰すわけにはいかないのである。
だからこそ、横綱審議委員会による休場勧告は本当に意味があると私は思う。様々な報道を見る限り、師匠にはその力は無いだろう。両親はそのような発言をしないタイプだろう。では、稀勢の里に影響を及ぼせるのは一体誰なのだろうか。
本来であればその役割を担うのが、横綱審議委員会なのである。
横綱審議委員会は、横綱を推挙するための組織だ。だが良いか悪いかは別にして、彼らは貴乃花の晩年以降、ご意見番としての発言が報道される機会が多い。
不甲斐ない取組の続く横綱を批判する。それが続けば引退という言葉を用いることで、横綱を引き締める。悪く言えば、メディアに露出し批判することで横綱を追い込む。渡辺恒雄に批判された貴乃花は相撲が取れる状態ではなかったが強行出場し、土俵を去ることになった。
彼らが世論を形成した時代も確かに存在していた。だが、本来止めねばならなかった朝青龍の暴走も、白鵬の変質も、横綱審議委員会は止めることが出来なかった。
私は心の底から思う。
彼らの何が、横綱審議委員会なのだろうか。
大横綱を潰し、止められず、挙げ句の果てには止めることすら放棄した。誰でも批判できる低迷横綱には強気で、相撲界の損失の危機の前には無力だ。
その上横綱を推挙するための基準は、もうある程度明確化されている。横綱審議委員会でなくとも、基準を元に考えれば横綱昇進の判断が乱れることは無いだろう。
私は心の底から思う。
今のままなら横綱審議委員会など、不要だ。
綱の責任故に強行出場した稀勢の里に「判断が甘い」などと言い放ててしまうのが、今の横綱審議委員会の実情だ。確かに判断は甘いか甘くないかと言われれば、甘いと言わざるを得ない。だが、それはこの人気を考えてのことだ。それでも楽しみにしているファンの前に横綱として立とうとした結果だ。休むには強い気持ちが必要だ。だが、手負いの状態で、それでも本場所に出場しようとすることもまた、強い気持ちが必要なのだ。
このような難しい状況を考えて「判断が甘い」などとよく言えたものだと思う。
相撲界は、稀勢の里まで失おうとしている。
今、その瀬戸際に居ると思う。
ここで立たずにいつ立つのだ。
横綱審議委員会よ。
まさか、会見で意見するだけで終わりなのか。
それが横綱審議委員会のやり方なのか。
稀勢の里を、全力で止めてくれ。
それが出来るのは、横綱審議委員会だけなのだから。
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コメントありがとうございます。
横綱に対する親方の強制力って、いつの時代も発動しづらいものだと思います。これまでに親方が横綱をマネジメント出来た事例って殆ど無いですから。
多分それは部屋を潤す横綱の方が強い立場で、親方は潤いを享受する側だから、横綱は自分で判断するしかないわけです。
だから、いつの時代も横綱はトラブルが絶えません。横審ならまだ対等に近いところまで来られますから、仕組みとしては上手いんですよ。だから、私は本来は親方の責任と思いながらも諦めていて、最後の砦たる横審に機能を果たして欲しいと思ってるわけです。
これで稀勢の里を止められなければ、解散でいいですよ。ほんとに。
横綱の気持ちは横綱にしか分からないといいます。北の富士さん等の横綱経験者達なら稀勢の里の気持ちを汲んで説得できたかもしれません。しかし立場上それができないのだと思います。
それを考えるといっそのこと横審を横綱経験者だけで構成したほうが良いんじゃないかと思います。