過去40年の幕内の学歴分布を考える。
中卒生え抜きの力士減少が
日本人力士低迷の要因として語られることが多い。
確かに、伸び盛りの15~22歳の間に
相撲に成長できる環境、即ち
相撲部屋に在籍することこそ力士としての
成長を促すことに繋がるというのが
その理由である。
事実、過去69名しか存在しない
横綱の中で大卒力士は
輪島ただ一人というところにも、
この仮説の信憑性は伺える。
※ちなみに旭富士は大学中退のため、カウントしない。
しかし、大卒力士の増加・
そして中卒力士の減少というのは
本当に正しいのだろうか?
そこで私は過去40年のデータを定点的に
観測することにした。
学歴別の幕内在籍力士数は以下のとおりである。
外国 中学 高校 大学
平成24年初場所 14 7 11 10
平成14年初場所 5 15 3 17
平成4年初場所 3 29 1 6
昭和57年初場所 1 27 4 3
ここからはっきり言えるのは、
この20年間での中卒力士の激減ぶりである。
相撲部屋の入門は、中卒というのが
スタンダードだったのだが、平成14年から
大卒力士が激増していることがよく判る。
そして、もう一つのトレンドとして
高卒力士の数が激増していることが挙げられる。
高校全入時代に突入し、
力士を目指すにしても「まぁ高校くらいは…」
と親族が思う傾向に有るのではないかと思われる。
ちなみに大関に昇進した琴奨菊や豪栄道、
栃煌山といった将来が期待される逸材達は高卒である。
高校が才能を延ばせる環境なのかは
今後の活躍次第で判明するが…
高卒力士がスタンダードになることは
一つの傾向ではあると思う。
また、相撲がリスペクトを失っていることからも
リスクマネジメントの一環としての高校進学は
これからも増加するだろう。
しかし、退路を断ち、全てを賭けて
中学卒業と同時に相撲部屋に入門する、
そういう存在が高卒・大卒を凌駕する様に対して
シンパシーを抱いてしまう。
とはいえ高校であるにせよ大学であるにせよ
重要なのは才能ある力士が
能力を最大限に伸ばせる環境であってほしいと
願って止まない。
面白い分析ですね!
外国人力士の学歴も調べてみるともっと面白いかも知れません。
なかなか資料を見つけるのが大変かもしれませんが、特にモンゴル人力士たちは日本の高卒の場合が結構あるんじゃないでしょうか。
朝青龍一人が目立っているだけかな??
確かに、中卒力士は激減してますね。
大卒力士というよりは、高卒力士が増えてますね。
佐久間山のように大学在学中に付け出しの権利を得た力士でも、大学卒業時に成績が残せなかった場合、前相撲からスタートですからね。
これでは、大学相撲を経験しなくても、高校卒業と同時に入門しても変わりませんよね。(大学での学生相撲の経験がどれだけ生かせるのかわかりませんが)
今後は、高校卒業してからというのがこれからの時代なのでしょうか。
大関は弱くなったのか? に続いて、こちらにも書き込みさせていただきます。
学歴社会、というのとリンクしてくる問題だとは思いますが、本当に強い力士なら、中卒で入門する方が早い出世が望める、というのは言うまでもないことです。
年6場所制になって以降の元横綱は幕下付出の輪島を除き、全員が22歳までに十両に上がっています。遅咲きのイメージがある千代の富士も新十両は19歳でした。
しかし、22歳といえば、大学4年生相当の年齢です。
つまり、入門の時点でハンデを背負っているともいえると思います。ある程度までの出世は早いが、22歳までに積みあげてきた物の差、というのが最終的な最高位と結びついてくるようにも思います。
近年の大卒だと、入門時で十両相当の力量を持ったと思しき力士は、雅山と武双山くらいなものでしょう。佐久間山も含めてよいかもしれません。とはいえ、相手が千昇だったとはいえ、「幕下で1敗」を喫しました。力量的には、雅山の入門時と同程度と評価しても良いかもしれません。
しかし、年齢で言えば、24歳。昭和63年生まれで高卒の栃乃若と変わらなかったりします。大卒で入ってきて連勝記録なんぞ出すから大物に見えるだけであって、現在の実力を考えれば、どう考えても栃乃若の方が上なわけです。
大卒力士の増加の要因となったのは、大卒力士がごそって関取にまでは手が届く現実があったからでしょう。特に平成1桁期に大卒の幕内力士が増えだしたことも要因としてはあるでしょう。その力士達が引退後部屋を興し、大学からスカウティングをしていった。旧木瀬部屋などその典型です。
また付出規定が変わり、厳格化されたことも一因としてあろうかと思いますし、序の口からとっても上に上がっていった大卒が出てくることで、それを模倣する、鏡として入門してくる力士も増えた、ということもあろうかと思います。また就職難で学生力士の就職の門戸も狭くなっているという日本全体の経済的事情もあろうかと思います(関取にならねば賃金もないに等しいが)。
しかし、皆が大成するわけではない。
それは貴方様が吐合に注目され、幕下に注目されているとのようで、私が云々言うよりもご承知のことかと思います。
昔は高卒は大成しない、なんていわれていることもありました。実際、佐田の山や若島津といった高卒の大関、横綱もいたりするわけですが、絶対数は少なかった。そのイメージを変えたのは栃東ではないかと想像しています。栃東は二世力士ということもあり入門時から注目を浴びましたが、休場スタートだったとはいえ、板井と同じ26連勝スタートで始まりました。一気に幕内まで上がりつめ、同年齢では入幕では千代大海を逆転。昭和50年代生まれ1号幕内力士となりました。年齢的には大学生の年齢。同い年の琴光喜や高見盛は大学生をしていたわけです。千代大海はたたき上げですが、琴光喜や高見盛とはインターハイなどでも顔合わせをしているわけで、ここで高卒>大卒という図式が作られつつあったのではないか、とも思っています。
そして付出規定が変わったあとの入門は栃東の2つ下、昭和53年生まれの垣添からになります。しかし、付出力士の最高位がとにかく冴えない。垣添、普天王のみが三役です。
そして、下から上がっていくものが大学生相当の年齢で関取になっていく。
大学で相撲を続けてプロに行くメリットが薄れつつあるのかもしれません。そしてそれを如実に表しているのが、今の上位陣でしょう。既出の栃乃若しかり、目立つところでは、やはり琴奨菊、豊ノ島、豪栄道、栃煌山。隠岐の海も高校時代の実績はあまりないもののインターハイにでています。
栃煌山なんて、3月生まれ、というのはあるにせよ、高卒で10代関取をやってのけました。
これが何を言おうかです。
大卒のレベルの低下は、アマチュアのレベルの低下とリンクしていると思います。昔は学生横綱でもプロにいくのは一握り。なので、社会人に幕下上位から十両レベルの実力をもった人がごろごろしていた。しかし、今はプロに流れるものが多く、アマに厚みがなくなる。そして、大学生は基本、部内での練習でしょうから、チャンスがあれば関取が胸を出してくれるプロの環境とは異なる。そして、試合の少なさ。トーナメントが主流ですから負ければ終わり。リーグ戦にするだけで、また違ったものが生まれるかとも思います(ただ、これは昔と今も変わっていないので比較要素とはならないだろうが)。
20歳までに十両に上がった力士の2/3程度は三役に達します。そして、これらの力士は十両をあっさりと通過していきます。これは十両が到着点ではなく、成長過程にあるから、とも言い換えられます。私自身、番付が一番上昇する年齢というのはまだデータ化していないのですが、感覚的には20~22歳のあたりに訪れると思われます。その時期に、高卒であれば入門していますし、大卒であれば大学生。その年齢にアマの大会で社会人と戦っても社会人に厚みがないことで、力をつけられない。これが大卒の失速、高卒の増加と考えています。
中卒の減少に関しては、学歴社会の影響でしかないとは思います。貴方様が書かれているように「まぁ、高校くらいは」だと思います。
貴方様が最後に書かれていた、「才能ある力士が能力を最大限に・・・」というのは、最早、大学では難しいのではないか、と察しています。ただ、年齢的には高卒なら「間に合う」。中卒のほうがより早く出世する可能性があるのだろうが、学歴社会となり、中卒のリスクよりも高校くらいは、となった。そこに高卒の躍進があると私は思っています。
>なの。さん
コメントありがとうございます!
確かにモンゴル人が高校から留学してくる場合って
日に日に増えていますね。
誰か忘れましたが、農大出身っていうのも居ますし、
そろそろ傾向分析が出来るほどの母数も取れるかもしれませんね。
>無双 さん
コメントありがとうございます!
私のイメージではてっきり大卒が増えたのだと
思っていたのですが、むしろ
10年前に比べると大学はかなり減って
高卒が増加しているんですよね。
高校相撲のコーチングが進化しているのでしょうか?
また、大学に行くメリットが減っているのでしょうか?
こうした数字の変動は、現場が一番敏感だと思うので
数字をこれからも追い続けたいと思います。
>serchさん
コメントありがとうございます!
実際に高安などのように、
中卒で各界入りした力士については
既に幕内でも上位を張っていますし、
大卒の佐久間山や明月院よりも
むしろ彼の方が評価されるべきだと思います。
それほど若いうちに自分よりも各上、
そして身近な競争相手が居ることが
実力を飛躍的に延ばす秘訣なのではないでしょうか。
とはいえ、相撲界に身を置くというのは
あまりにもリスキーで、
しかもリスペクトを失っていると来たら、
親族としては大相撲に進ませるにしても
逃げ道を作ることは自然な成り行きだと思います。
相手の立場に立てば、そんなことは分かります。
しかし、それでも力を伸ばせない可能性が高い進路を
才能ある力士が時代的な背景の下選んでいるということは
残念なことです。
だからこそ、私は相撲界がリスペクトを取り戻してほしい。
レスありがとうございます。
なるほどです。
貴方様が、「大卒に価値がある」と判断されてのご意見でないようであれば、以前であれば中卒で入門してきて、もっと早い段階で上位に上り詰めることが出来るだろう力士が、角界へのリスペクトが失われ、保険という意味でも進学という道を選び、結果的に(たらればは言っても無駄だとは思いますが)中卒で入門するよりも遅い出世で、その可能性をふさいでしまっているのではないか?
と捉えているのであれば、私も、まさにその通りだと思います。
嘉風、佐久間山は4年生でないときに学生横綱になりました(嘉風はアマ横綱でしたっけ?)。そのために、付け出し資格を持たないで序の口からとりました。彼らに「中退」という発想はなかったのか。あったとしても、何故、そこで角界に入門という選択肢を選ばなかったのか。それとも、選べなかったのか。これは本当に、彼らが相撲で飯を食っていきたいと考えていたのであれば憂慮されるべき問題だとも思います。
私の最初のコメントで例示した武双山、雅山。この両名は3年次中退でした。今みたいな明確な付け出し規定のない時代でしたが、おそらく、今の規定であっても彼らはアマ横綱もしくは学生横綱になった時点で、中退、入門をしたんじゃないか。そう思いますし、その結果が雅山はあっさり陥落したとはいえ「元大関」の称号を入手できたのではないかとも思います。
要は、その心意気があるかどうか、なのかもしれませんね。
千代大龍も一旦入門を決意しておきながら教職の道を探る、入門撤回というところまで報道されました。やはり、少なくともそのときには千代大龍には「角界へのリスペクト」はなかったんだと思います。
このご時勢ですから、角界に限らずとも中卒でいきなりつく価値がある仕事がそうあるとは思えません。とはいえ、中卒でいきなりプロの世界に立てるプロスポーツもそうそうありません。サッカーのユース(サッカーには明るくないのであまり語れませんが)くらいではないでしょうか。野球もプロは育成システムがしっかりしていないし、何よりもまず甲子園を目指してしまうので中卒で阪神タイガースに入った選手もいますが、大成せずに最近引退してしまいましたし。
力士ピラミッドを構成する上で、下の層というのも欠かせません。十両に上がれるのは約13名に1人。では、13分の12に入った中卒が、引退後どうするのか。社会が、元力士ということで「よく受け止めてくれるのか」「悪く受け止めてくれるのか」。出世するだけではない、角界の魅力。それがリスペクトに繋がっていけば。
そういう思いは、貴方様も私も同じなんかじゃないかと思います。
話ずれまして・・・大関は弱くなった?のところで、旭富士の大関時代に大相撲を見られたとのありまして、私と同世代か私よりやや下の年齢なのかな?と想像させていただきました。私は現在35歳。大相撲の世界で言えば、花の51にあたるのですが、30代で大相撲について真剣に語り合える仲間というのが少なく(私には同世代の大相撲仲間もいますが)・・・、勝手にですが、貴方様に親近感を沸かせていただきました。
これから貴方様のブログに注目させていただきたく思いますので、今後とも宜しくお願い致します。
>searchさん
おっしゃる通りです。
中卒で角界に入る方がはるかに強くなれるのに、
そのことは歴史的にも明白でありながら
時代的な背景や13分の12に成ることを恐れるが故に
大学進学を選択して可能性を潰してしまうことが
残念なのです。
仮に大学進学しても、中退して角界入りするだけの
度胸と自信があればいいと思うのですが、
それさえも無い。
とはいえ、ここで中退しては何のための大学進学なのか?
という別の問いも生まれるので複雑なのですが…
しかし、可能性を自ら狭める選択を
相撲でダメだったときのリスクを考慮して
優先している現状はとても寂しく思います。
失われたリスペクトを取り戻すためには
多大な努力が求められます。
ましてやマスコミが相撲をリスペクトしていない
現状に於いて失地回復するためには
土俵の充実によってファンが力士を支え、その結果として
マスコミの姿勢を変える必要が有ります。
ちなみに、searchさんのご質問にお答えすべく、
今回は私の幼少の頃の相撲体験をテーマとして
書いておりますので、是非ご覧ください。
>入間川サポーターさん
最近アマチュア相撲についても
中継が有れば時間の許す限り見ているのですが、
大相撲とは相撲の質が違うんですよね。
おっしゃる通り立ち合いの駆け引きに代表されるような
勝つための諸般のテクニックが随所にちりばめられていて、
そのテクニックが力士として小さくまとめてしまっている
ような印象を受けます。
大相撲ではそのテクニックが裏目に出て、
本格派の中卒叩き上げや外国人に圧倒される
という現状を招いているように思うのです。
大相撲の基礎に成る、小手指のテクニックに頼らない
太い幹を高校で培うことが出来れば違うと思うのですが…
個人的な見解になりますが、中卒力士と大卒力士の決定的な差は、大関・横綱に昇進するチャンスの期間ではないかと考えまています。中卒で早いうちに関取に昇進した力士は、上位の壁にはね返されてもそこから力をつけて再挑戦も可能ですし、何よりも経験を積めることが最大の強みといえます。力士としてのピークは、大器晩成型のような例外を除けば20代中盤から後半にかけて、これは学歴に関係なくほぼ共通であると思います。大卒の場合、幕内に上がるには少なくとも1年はかかるでしょうし、これまで大卒力士を見てきた印象としては、昇進のチャンスを一度逃がすと次のチャンスを掴むのは厳しいと感じざるを得ません。ましてやケガをしてしまえば…。また、大関に昇進できてもその時期がピークと重なってしまっているのではないでしょうか。大卒横綱が輪島唯一人であることからもうかがえます。やはり入門の時期が中卒と大卒で7年も違うのはかなり大きいですね。稀勢の里が大関に昇進できたのも、中卒だったからだと思ってます。ただ、中卒力士の数も減少していることから今後図抜けた力を持った力士が現れる確率も低いと見ています。高卒力士については、あまりよく調べてませんが、幕内に定着してきているようなので、スピード出世できれば3年というハンデはそうないように思えます。現在は、高卒での入門がスタンダードになるかどうかの過渡期かもしれないですね。