稀勢の里VS白鵬。「10年の時を経て、動き出す時計の針」とは?

稀勢の里の歴史とは、落胆の歴史である。
横綱になる大器として期待され、
外国人力士に対抗出来る素質が有りながら
同じ失敗を繰り返す。
失敗を繰り返すのは、本来相撲を通じて学ばねばならない
力士としての強さを体得していないから。
凡ミスを繰り返すこと、心の弱さを露呈すること。
相撲の神髄を極めて光の相撲に邁進するため、
これらは乗り越えなくてはならない山だったのである。
だが、それが出来ない。
相撲界をリードする存在としては
欠落している要素が多い力士なのである。
我々は相撲に、強さを求める。


少々の試練では折れない、心の強さ。
日々の鍛錬によって生み出された、身体の強さ。
そしてその強さの源泉に有るものこそ、
相撲道の基本的な行動原理なのである。
日本的な強さを突き詰めて努力するも、
克服しなければならない心の弱さや
技術的な未熟さゆえに稀勢の里は負け続けた。
稀勢の里は、強くなれない。
もう我々は、稀勢の里を諦めるべきなのか?
相撲の神髄にいつまで経っても近づけない
稀勢の里に対してこのような声が上がるようになったのは
致し方ない話だったのである。
先代親方の死。
そして、自らを変えるための出稽古解禁。
自分を見つめ直し、相撲に真摯に取り組むことで
弱い自分を克服する。
脇の甘さを修正し、相手方力士の動きを研究することで
相手の術中に嵌らない相撲を体現する。
彼は相撲に向き合うことで、日本的な相撲の力、
すなわち光の力を手に入れた。
今まで苦手としてきた把瑠都を投げ倒し、
琴欧洲に一切の逃げ道を作らず、
日馬富士には一気の速攻で牛耳る。
鶴竜も左を差して一捻り。
全て、自分のしたいことを体現したのである。
それ即ち、我々ファンが、今まで観たかったが
たまにしか観られなかった光景である。
一瞬の輝きは、潜在能力が有れば誰にでもできる。
だが15日間輝き続けるには
様々な状況に対応できる技術と、
多少のことには動じない精神力と
鍛え上げた肉体が必要になる。
弱さを認め、強さに向き合う。
こうした日本的強さを体現し続けてきた
平成の大横綱:白鵬とのマッチレースと言うのも
非常に感慨深い。
思えば白鵬は本来、外国人には理解しづらい
日本の相撲の美徳、文化を必死に理解することで
大鵬や双葉山といった横綱としての
品格を備えた力士に近づいていった。
相撲界が様々な問題で揺れた時に
最後の最後で倒れなかったのは
一重に白鵬が力士の理想像を体現していたからだろう。
そんな白鵬は今原点回帰し、
汚い、行儀が悪いと言われながらも
今までで一番凄い相撲を取り続けている。
むしろ、今が一番強いのでは?と思うほどである。
遂に日本的な光の強さを身に付けた稀勢の里。
日本的な強さから離れ、本来の自分たる
モンゴル的闇の力に回帰した白鵬。
停滞期を経てルーツに戻り、
互いのイデオロギーに順じた相撲を取るという結論に至った2名。
貴乃花亡き後日本人力士が体現出来なかった
相撲の強さを、遂に形にしつつある稀勢の里。
そしてそれを迎え撃つのが、朝青龍とともに
日本人力士を倒し続けてきた白鵬。
明日は、歴史が動く。
これほど熱い相撲は貴乃花が武蔵丸を破り、
鬼の形相をした時以来のことである。
相撲ブームの最後の火が燃え盛ったあの日を境に
止まっていた時間が遂に動きだす瞬間は、
もうすぐそこまで来ている。
さぁここまで来たら、無駄なことを一切排してただ楽しもう。
凄い戦いになることは、誰の目にも明らかである。
安っぽくつかわれることの多い「伝説」という言葉だが、
明日の取組は間違いなく伝説に成る。
見逃すな。
目に焼き付けろ。
そして、語り継ごう。

稀勢の里VS白鵬。「10年の時を経て、動き出す時計の針」とは?” に対して1件のコメントがあります。

  1. muan より:

    本記事を拝見して、
    今日の大一番に向けて、さらに気持ちが高ぶってきました。
    こんなワクワクするのは本当に久しぶりですね。
    相撲が好きで良かった、、、って改めて思っています。
    nihiljapkさんの相撲愛にはかないませんが。。。
    のちのち振り返って、
    今日が伝説の始まりだった、と思える日を願ってます。
    ちなみに、V逸でも来場所が綱取りと理事長が
    言ったとか言わないとか、、、
    夏に向けて楽しみが続く幸せを噛み締めたいですね~

  2. Nihiljapk より:

    >muan さん
    コメントありがとうございます!
    1週間経過して読んでみると、凄いことになってますね…笑
    そういう期待感をもってこの歴史的な一番を見ることが
    出来たことは、本当に楽しいことでした。
    その後の結果を踏まえた上でも、良かったと思っています。
    恐らくは相撲界の一つのターニングポイントになったであろう
    あの一番が、更なるストーリーを生み出すことを
    願って止みません。
    7月場所も、本当に楽しみです。

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