大相撲7日目。北太樹の立ち合いの変化から、北の湖部屋の力士達の人間模様を想像する。

大相撲7日目を観戦した時に、
非常に意外な場面を目撃した。
豊ノ島VS北太樹。
前頭4枚目でここまで3勝3敗の豊ノ島と、
横綱大関との対戦が続き、5連敗スタートで
ようやく初日が出たばかりの北太樹。
上位には及ばずとも、実力者同士の対決である。
観客の期待は高まる。
仕切る。
と、同時に北太樹が変化する。
だが、その変化が中途半端なので
豊ノ島が対応する。
一瞬で押し出される北太樹。
北太樹の、というより北の湖部屋力士の
このような姿はあまり記憶に無いので、
変化に対して苛立ちと言うよりは驚きを覚えた。


最近気づいた北の湖部屋力士の特徴として
変化しない、逃げない、ということが有った。
恐らくそれは力士としての教育というよりは
人間を育成する上でこの部屋が重んじていること
なのではないか?という結論に至った。
北播磨も、鳰の湖も、そして吐合も。
そして大露羅はロシア人力士が道を踏み外す中で
一人相撲界に残り続けた。
恐らく、土俵上だけでなく、生きていく姿勢として
逃げない、どんなことを受け入れて前に進む、
ということが部屋の掟なのだろう。
だが、北太樹はこの取組で逃げてしまった。
30歳にして自己最高位。
今まで上位との対戦が有る場所は
大きく星を崩しており、一つの試練である。
加えて、北の湖部屋初の三役に手が届く位置である。
一代年寄で言えば、千代の富士は千代大海を育てた。
そして大鵬は、巨砲を育てた。
だが、北の湖は三役力士を育てていない。
定年まであと5年。
自分が何とかその期待に応えたい。
そんな思いが去来したことは想像に難くない。
何とか勝ち越しを。
そう期して挑んだ5月場所で、彼は5連敗を喫する。
もう負けられない。
宝富士を下して、次は豊ノ島。
星勘定で考えれば、負けられない一戦である。
そして、魔が差してしまった。
プレッシャー故に、功名心故に、
彼は自分との戦いに敗れてしまった。
北の湖の心中はどのようなものだったのか。
このような状況に於いても、生き様を貫くことを
彼に要求したのだろうか。
変化は北太樹の子心故だったのである。
私は、恐らくこのような現場が有ったのではないかと想像する。
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北太樹:「勝負の掛かった一番で、事も有ろうに変化してしまった…」
北太樹:「オヤジの教えに背いて、しかもこの結果…」
北太樹:「部屋頭として、俺は一体何をしているのだろうか?」
北の湖:「明義、今日の相撲はどうしたんだ?」
北太樹:「オ、オヤジ!すんませんでした!何も言い訳は有りません!」
北の湖:「俺は別に結果をどうこう言う気は無い。負けたっていいじゃないか。
 今日のお前のベストを尽くせば、それでいい。結果は付いてくる。」
北太樹:「ハ、ハイ…」
北の湖:「オレの事を想って、結果を出したいというのは嬉しい。
 だがな明義、オレはな、勝ち以上に大切なことが
 有ると思うんだよ。それが何か分かるか?」
北太樹:「…」
北の湖:「生き様だよ。土俵の上ではな、そいつの生き方が全部出るんだよ。
 そういうものを、ファンは観ている。
 だから、強い奴だけが人気が有るわけじゃないだろ?
 見ている人は分かってるんだよ。な。」
北太樹:「た、確かに…」
北の湖:「今日の土俵では、お前の生き方が出てしまったんだよ。良くも悪くもな。
 一人の人間としては嬉しい部分も有るが、力士としては
 それじゃダメなんだよ。これだけのファンを裏切ってしまったんだからな。」
北の湖:「だからな、明義。今日の失敗を絶対に忘れちゃいけないんだ。
 おい、田中!聖也!」
現れる鳰の湖、北播磨。
北太樹:「!」
北太樹を羽交い絞めにする鳰の湖。
状況を理解できず、暴れる北太樹。
北太樹を目の前に、いつもの仕切りを見せる北播磨。
土俵上と変わらない鋭い眼光が北太樹を捉える。
眼光を見据えながら何が起きるのかを察し、抵抗を諦める北太樹。
北播磨:「(明義さん、すみません…)」
無抵抗の北太樹のみぞおちにぶちかましを決める北播磨。
悶絶する北太樹。
顔色一つ変えずにその場を立ち去る北の湖。
肩を貸す、同い年の吐合。
同級生の部屋頭の苦境に心を痛めながらも、
そういう試練を与えられることに嫉妬の念も抱く。
何も言わないが部屋頭の重さを想う、北播磨と鳰の湖。
この壮絶な現場を目の当たりにして、言葉を失う遠州洋。
そして、いつもの調子でピノを喰う大露羅。
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このようなことが有ったかは、当事者だけが知る。
だが北の湖部屋の力士は、少なくともこのような意識で
相撲を取っているのではないかと思うのだ。
というわけで、私はもう一度この部屋の稽古を見たいと思う。
一緒に見学を希望される方は、コメントを下されば幸いである。

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