おらの仁義なき戦い。今場所の幕下上位が史上稀に見る激戦である理由。その2.千代丸編。

幕下が面白い。
力は足りないが、あともう少しで超人に成れる。
精神的には足りないが、向上心は人一倍有る。
力量は足りないが、周囲の応援が埋めるそんな存在。
それを人は「アイドル」と評するのだが、
私が幕下を面白いと感じるのは、つまりそういう理由である。
乗り越えていく強さ。
そして乗り越えられない弱さ。
どちらを取っても人間であり、力士なのだ。
だから私は幕下に惹かれる。
さて、そんな幕下なのだが、今場所はいつもに増して
熱くならざるを得ない状況なのだ。
十両からの降格組が多く、リベンジに燃える
実力者が自らの課題に向き合っている。
技術的にも精神的にも乗り越えようとする
ストーリーが展開されているが、
今回はそれ以外にも熱い要因が有る。
地道に力を付け、遂に幕下上位で勝負する
力士もまた、多いのである。


千代丸。
肥後嵐。
出羽疾風。
彼らは若くもないが、ベテランというわけでもない。
三段目や幕下で壁に当たり、
時間を掛けて一つ一つを解決してきた
力士の集まりである。
千代丸の場合はもう一つ、期する理由が有る。
知っている人も多いが、彼は十両:千代鳳の兄である。
兄と弟。
同じ世界に入れば、必然的に比較されることになる。
兄の方が出世が早い場合はそれほど問題ではない。
その理由を年齢的な要因として消化することも
可能だからである。
問題は、弟の方が出世が早い時だ。
兄弟だから、体格は大して変わらない。
しかし、兄の方がキャリアは長い。
こうなると、周囲はどういう扱いをするか。
発奮させようとして、弟との比較を持ち出す者。
無自覚に弟の出世ばかりを喜ぶ者。
そして、兄に気遣い出来るだけ比較しない者。
全ては自分も追い付けば解決される問題だが、
どういうわけかこれは本当によく発生する
問題なのである。
有名なところで言えば、若乃花と貴乃花。
現役で言えば、笹ノ山と笹山。
マニア度を上げると羅王丸と爆羅騎。
どの兄弟も、何故か弟が優秀なことが多いのだ。
怪我や体格といった問題であれば、大きな問題、
課題として感情移入の対象に成りやすいが、
兄弟の比較という論点は、問題としての
優先度が低く、また人のデリカシーに依存するだけに
思った以上に根が深いのだ。
「兄より優れた弟など存在しない」とは、
そんな悲哀をギャグとして扱った名言なのだが、
これがギャグに成るということは、
思った以上に傷つく人間は多いということ。
弟に追いつくことはモチベーションである。
だが、尻に火が付いているのでプラスではなく、
マイナスとしてのモチベーションである。
焦り。
悲しみ。
怒り。
そうした要因を抱えながら、日々稽古に取り組む。
土俵で結果を出す。
そうした積み重ねを経て、
千代丸は遂に幕下筆頭にまでのし上がった。
弟の呪縛から放たれた時、千代丸は
一人の力士として認められる。
私はその後のストーリーを見てみたいのである。
続く。

おらの仁義なき戦い。今場所の幕下上位が史上稀に見る激戦である理由。その2.千代丸編。” に対して1件のコメントがあります。

  1. きしめん より:

    でも、出世は決して遅くはないですよね。東幕下筆頭で3勝を挙げ、ついに関取リーチ。
    先に出世した弟からハッパをかけられ続けていると相撲雑誌で読みましたが、兄弟で両親に家をプレゼントする夢もすぐそこまで来ましたね!
    千代丸も九重部屋全体も、勢力はうなぎ上り!

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