好調:千代大龍への大関獲りの期待の薄さ。アマチュア出身故の弱さ・甘さを考える。
千代大龍が好調である。
元:学生横綱で、幕下付け出しデビューをするほど
アマチュアでのキャリアが傑出していた力士で、
約2年で上位を相手に5勝1敗ということだから
順調過ぎるほど順調な出世と言える。
負け越しの殆どが休場絡みで、まだ底を見せてない。
逆に休場がここまで3場所有るので、
そちらの方が不安になるほど、
実力に関しては今のところ申し分ない。
だが、千代大龍についてはこれほど
順調であるにもかかわらず、
また底を見せていないにも関わらず、
大関・横綱という声はなかなか掛からない。
単にそれは、彼の引きの姿勢に有る。
押して良し、組んでよし。
そして、不利な体勢からも逆転するだけの
テクニックも持ち合わせている。
しかし、彼は押すテクニックが有るために
つい引いてしまう。
引くというのは、即ち弱さと解釈される。
未熟さを露呈して、安易に勝ちを取りに行く
狡い力士だと認識されてしまう。
実際のところ、技術的に優秀だからこそ
スキの有るのを逃さずについ引いてしまうのか、
それとも世間で言われているように
精神的に弱いから引いてしまうかは分からない。
だが、引きは失敗すると態勢を崩すので
するのであれば決めなければ負けに直結してしまう。
そう。
そもそもリスキーな手法であることは間違いない。
そもそも論として、学生出身力士というのは
勝つための技術に特化しており、
立ち合いやこう着状態を打破するための手法は
大相撲に直接入門した力士よりも秀でていることが有る。
だがアマチュア故に、高校生は大学に、
大学生は社会人に、という選択肢を残した状態で
相撲に勤しんでいる。
そのため、退路を断って入門している中卒力士や
外国人力士と比較すると甘さを露呈してしまうことも多い。
そうした学生出身力士の悪しき面を見せることが多いために
千代大龍は実力の割にはアンチが多く、
結果が出ても批判の対象になってしまうのである。
学生出身力士は、社会人で安定した収入を得ながら
アマチュア相撲を取り続けるという選択肢も有る中で
大相撲を選んできている。
つまり、彼らは彼らで退路を断っているのである。
年間10名程度しか大卒力士が誕生していないことからも
彼らとて勇気ある人間だということは明らかだ。
だが、不思議なことに大卒力士はアマチュアの癖が抜けない。
そしてその癖というのがアマチュア故の甘さから来るもの
だということは皮肉なことである。
アマチュアとプロの差というのは、覚悟の差である。
引きを封印し、正攻法に目覚めた千代大龍は
その覚悟が遂に芽生え、花開きつつある
と解釈できるのかもしれない。
しかし、変化は一時期で終わることも有る。
上手くいかなくても退路を断ち、人間としての成長に
結びつけられるか。
それが今後問われることになる。
大卒力士の可能性を示すためにも、
新しい千代大龍が道を切り開くことを期待したい。