手負いの白鵬VS万全の稀勢の里。怪我と連勝の間で揺れる横綱が取る選択肢とは?
今日の一番の見どころは、白鵬VS稀勢の里。
先場所、10年に一度の大相撲と目し、
その期待に違わない至高の一番となった。
現在相撲界で考えられる中でも
1・2を争うゴールデンカードである。
白鵬は相撲界の第一人者であることは
疑いも無いことであるし、
そして稀勢の里は良くも悪くも期待を一身に
受ける存在だ。
これが優勝のかかった大一番であれば
力の入り方も違っていたのだが、
2人の辿った経緯から、今場所は別の意味で注目の一番だ。
というのも、稀勢の里は万全、
白鵬が満身創痍という状態だからである。
稀勢の里にとって、今一番の課題は精神面である。
序盤で番付が下の力士を相手に3敗。
優勝も綱取りも消滅したことは
本人にとっても相当痛手だったことは間違いない。
だが、稀勢の里はここからが違った。
3敗後の後半戦、彼はここまで全勝。
その中には、苦手中の苦手の琴欧洲と
日馬富士すら含まれている。
今までは大関昇進後も、彼らには合口が悪い状態が続き、
それ故に10勝5敗の壁を破れずに居たが、
2場所連続でこの苦手を克服した。
つまり、稀勢の里はここ数カ月で
劇的な変化を遂げたと言っていいだろう。
だが、彼には変わっていない所が有り、
それが正に精神面だということである。
故に格下相手に敗れた。
だが、今日の稀勢の里にはその精神面の課題は
無縁の相手であり、プレッシャーとは無縁の状況である。
綱取りも無く、負けに対する怖さを感じる必要の無い相手。
つまり、今日の稀勢の里は万全なのだ。
対する白鵬は、守るべきものが2点有る。
連勝記録と、自らの健康である。
脇腹を痛め、一説には肉離れをしているとも聞いている。
脇腹の負傷は癖になることで有名だ。
数々のスポーツ選手が小さな怪我への対処を間違え、
怪我が常態化することによって選手生命を縮めている。
白鵬もそのことは重々承知しているはずだ。
また、周囲もそうした警告は出すことだろう。
というのも、白鵬はこのレベルの怪我を負った状態で
土俵に上がった経験はあまり無いからだ。
だが、彼には連勝記録が有る。
そして、大相撲の看板として、相応の相撲を取る矜持が有る。
一番頭が痛いのは、ここで出てくる相手が
恐らく今、白鵬が一番相手にしたくない力士。
白鵬を除けば一番の実力者だからである。
今日は、白鵬はどのような選択をするのか。
連勝を捨てて、健康を取るのか。
健康を捨てて、連勝を取るのか。
ここでの無理は、致命傷になる可能性が有る。
そのうえ、これだけ充実している稀勢の里が相手では、
相当に追い込まれることは確実である。
先場所のような展開になると、恐らく彼の脇腹は悲鳴を上げ、
千秋楽は休場に追い込まれることだろう。
そうならないようにするには、
無理をせずに流すこと。
立ち合いに変化するか、不利になったら抵抗しないか。
敗れるという選択肢も視野に入れつつ、
今出来るベストを出す。
誇り高き横綱は、今日どうするのか。
稀勢の里が実力を付けただけに発生した
頭の痛い問題に、大相撲の看板はどのように対処するのか。
私はここで力を抜いたからといって、
白鵬を責める気は無い。
唯一の回避策は、稀勢の里が立ち合いに失敗し、
この勝負があっさり決着すること。
まさか私が、このような展開を期待することになるとは
夢にも思わなかった。
いずれにしても、見ものである。