2場所の苦戦から導き出した結論。白鵬が稀勢の里対策に見せた「変化」とは?

白鵬が優勝を決めた。
顔を血で染める中、2差で追う稀勢の里との直接対決を制した。
勝ち名乗りを受ける姿を目の当たりにすると、
力士とは格闘家なのだということを再認識させられた。
5月場所の捨て身のすくい投げ。
7月場所の衝撃のカチ上げ。
今場所の取組の中では、髷に手が掛かった場面が
ハイライトとして記憶されるのだろうが、
対決の中に於ける重要な要素とは言い難い。
前2回があまりにも印象的だったために、
今回の内容は相対的に語られることは
少ないのではないかと予想する。
では、何故今回はこのような取組になったのだろうか。
ポイントは、白鵬の変化である。


5月場所も、7月場所も、白鵬は「闇の白鵬」と言うべき、
普段見せないスタイルで稀勢の里に対峙していた。
張り差し。
カチ上げ。
横綱相撲と呼ぶにはあまりにも行儀の悪い相撲。
この取り口を支持しない人も出てくるはずだ。
実際、年齢層が高ければ高い分だけ
この相撲に対して批判的な割合は多かった。
しかし、白鵬は勝つために手段を選ばなかった。
その覚悟こそが、二人の相撲を盛り上げることになり、
ハイライトとして先の行動に現れたわけだ。
今回も、荒々しい相撲ではあった。
だが、その成分は薄らいでいた。
実はその荒々しさこそが、これはでは裏目に出ていたのだ。
張り差しに行くから、隙が出来る。
感情的な取り口は、稀勢の里に得意な形を許す結果となった。
不利な体勢を打開するために白鵬は張り手を多用し、
また無理な体勢からの投げを打つ結果となった。
別の相手であれば張り差し一発で、カチ上げ一発で
戦意を根こそぎ奪うことが可能ではある。
だが、稀勢の里には逆効果であることを、
先の2場所で学習したのだ。
言うなれば、光と闇の融合。
普段着の横綱相撲に荒々しさをミックスする。
それこそが、白鵬の回答だった。
とはいえ、完勝だったかと言えばそうでもない。
稀勢の里の生命線とも言える、左四つを
今回も許してしまったのである。
攻めを許す前にスピードで巻き返し、
どうにか事なきを得たが、まだこの対策は完全ではない。
そして、この対策が有効か否かは分からない。
何故なら、今回はたまたまリカバリーに成功したからだ。
つまり、白鵬には課題が残ってしまったのである。
稀勢の里を相手に、自己改革に臨んだ白鵬。
そして、白鵬に自己改革を促す結果となった稀勢の里。
2か月の時は、更なるドラマを紡ぐ。
11月場所は一体どのような対戦になるのだろうか。
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