幕内は、白鵬ら上位総当たりとそれ以外とで相撲の質が異なる。歪な構造が生み出す、大相撲の魅力。

先日、遠藤の実力は、幕内で言えばどの辺に位置しているか？
というエントリーを書いた。
三役の常連である、栃煌山には敵わない。
だが、旭天鵬などには勝利している。
対戦成績から類推すると、
「上位総当たりの番付に度々顔を出す力士とは
今のところ勝負になるレベル」
であるとの結論が出た。
ここで一つ、明確なラインとして出てきたのが
「上位総当たり」というキーワードである。
横綱から前頭の全力士で幕内総合優勝が争われるが、
サッカーなどのように、全ての力士が総当たりで
その優劣を決めるわけではない。
そう。
幕内は、大きく分けて2種類に分類されるのだ。

第一に、上位総当たりになる番付。
そしてもう一つが、それ以下の力士たちという構成である。
上位総当たりの位置こそが相撲界の頂点。
相撲界のトップ16力士が凌ぎを削る最激戦区だ。
具体的には、横綱、大関、関脇、小結、そして前頭筆頭～3枚目。
星勘定や休場の都合でこれより下の力士と当たる機会も有るが、
基本的にこのトップ力士同士の対決が組まれることになる。
前頭4枚目以下の力士はそれ以下での対戦が大多数。
つまり、同じ幕内といえど、対戦する力士の質が明確に異なるわけだ。
私はイングランドのサッカーリーグに因み、
勝手に横綱～前頭3枚目のグループを「プレミアリーグ」、
前頭4枚目以下を「チャンピオンシップ」と呼んでいる。
プレミアリーグに位置する力士は、10名がほぼ固定されている。
横綱2名大関4名は語るに及ばず。
豪栄道、栃煌山、妙義龍、そして松鳳山。
つまり、あと6枠を争って毎場所入替戦が行われている
という構造なのである。
そのボーダーラインに位置しているのが主に
隠岐の海、魁聖、安美錦、碧山、高安、千代大龍、
阿覧、臥牙丸、豊響、時天空、旭天鵬、豊ノ島、宝富士、勢
といったところだ。
だが、彼らはプレミアリーグに昇格しても、
安定して残留することは難しい。
チャンピオンシップの闘いとプレミアリーグの闘いは
そもそも異なるからである。
チャンピオンシップで圧倒的な強さを見せても、
プレミアリーグでは星を伸ばせないということはよく有る。
故に、チャンピオンシップに属しながら
幕内総合優勝してしまうということは
「幕内で一番優秀な力士」という意味を成さない可能性も有るのだ。
チャンピオンシップで優秀な成績を残していると
終盤でプレミアリーグの力士と対戦することは有るが、
あくまでも数人に限られるからである。
私が非常に仲良くしている、相撲データを分析している方は
力士の実力を数値化する際に、力士の位置や成績を考慮している。
それはこの辺りの事情が大きく関与しているからだ。
そもそも対戦する相手が大きく異なるのだから、
それに応じて地位を作るのが合理的且つ平等だと思う。
恐らく、国際化を目指すのであれば、
この辺りを世界中の誰が見ても納得する形に変更することになる。
今、大相撲という組織が形成されたとしたら
プレミアリーグとチャンピオンシップを幕内と十両のように
完全に区分けしてしまうところだが、そうではない。
そこには歴史が有る。
そして、平等でないことこそ、大相撲の面白いところである。
歪な構造が生み出すドラマが有り、その歪さこそが
スポーツではない文化的側面を生み出しているのだ。
そう。
何しろ、大相撲は無差別級しか無い世界なのだから。
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