1年間の苦難の末に得たもの。横綱昇進後の日馬富士が打ち立てた、新たな2つの価値観とは?

九州場所も9日目が終わった。
早いものであと6日でこの楽しい日々も
来年までお預けだと思うと寂しい気もするが、
ここ数場所と一つ変化したことが有る。
ここまで全勝が、2名居るのだ。
序盤に無類の強さを見せる白鵬が全勝であることは
もはや日常の光景なので、そこは置いておこう。
もう一人の全勝。
これこそが、非日常。
横綱日馬富士が、盤石なのだ。
早い。
荒い。
強い。
松重豊さんの言うところの、「強い安馬の相撲」。
相手に付け入る隙を与えることなく、
一気に圧倒してしまう取り口。
これこそ大関に昇進したときの安馬の相撲であり、
2場所連続全勝優勝で横綱に昇進したときの
日馬富士の相撲である。
だが、ここに行き着くまでには、1年を要した。


横綱に成れば、横綱を相撲を求められる。
横綱の相撲。
それは、相手の相撲を受け止めたうえで勝つというスタイル。
双葉山や大鵬、北の湖や貴乃花。
最近であれば白鵬がこの形に該当する。
一体いつからだろうか?
横綱に昇進すると、横綱の相撲を求めるようになったのは。
いわゆる横綱相撲を取るには、適性が有る。
相手を受け止めるのだから、それ相応の
肉体量が求められることは言うまでもない。
非常に簡単な話だが、この点を考えても
日馬富士に大鵬の相撲は取れないのだ。
日馬富士の良さは、相手を受け止めた時に現れるものではない。
相手を速さで上回った時にこそ、表れる。
日馬富士は横綱を求められ、そして苦悩した。
時に安馬の相撲に戻すのだが、周囲の期待に応えようと
横綱相撲に励み、そして失敗してきた。
そうした無理が、体に現れてしまった。
結果が出ない日馬富士に対して、メディアや
横綱審議委員会は辛辣だった。
激励と言う名の圧力は、あの「日勤教育」を彷彿とさせる。
だが、私はこの1年は無駄ではなかったと考えている。
その理由は2つある。
一つは、日馬富士の相撲に対して、一定の理解が得られてきたこと。
日馬富士には横綱相撲ではなく、やはり安馬の相撲なのだ。
松重さんの言葉は決して嫌味ではなく、
一つの真理を突いたものだった。
もし、日馬富士がそれでも横綱相撲を求められるのであれば、
あそこで松重さんに対して異なる反応が返ってきたはずだ。
だが、視聴者もアナウンサーも、日馬富士の相撲は
安馬の相撲であると考えていたからこそ、
あの時の放送は非常に自然に空気が流れた。
もう、日馬富士が横綱相撲でない、安馬の相撲を取っても
かなりの相撲ファンはそのことに対して納得するだろう。
もし、それでも横綱相撲を求める者が居れば、
それは一つの意見として置いておけばよいのだ。
100人が100人納得するスタイルというのは存在しない。
白鵬の相撲ですらつまらない、という人も居る。
そういう声は、北の湖の頃や貴乃花の頃にも有ったのだ。
いわゆる横綱相撲ではない、その力士特有の横綱相撲という在り方。
日馬富士は苦難の末に、そういう価値基準を認めさせたのである。
そしてもう一つの理由は、この1年の苦難を乗り越えて
新しい横綱像が生まれたということ。
一言で言うと「みんなの横綱」という在り方である。
批判や紆余曲折を経て、日馬富士のファンは
彼を何とか支えようとしている。
これを同情と見る人も居るかもしれない。
横綱というのは、神様なのだから我々の想像もつかないよう
超越した存在でなければならない。
それもまた、一つの横綱像だ。
だが日馬富士は、彼のファンから今熱烈な声援を受けている。
その数は、他の横綱のファンよりも少ないかもしれない。
だが、私はこれだけ熱の籠った声援を受ける横綱を他に知らない。
それは、彼のファンがこれまでの道程を知っているからこそ、である。
苦難の日々が続いたが、彼は休場せずに横綱としての
職責を全うした。
批判を浴びても、結果が出なくても、土俵に上がり続けた。
そういう姿を、ファンは見ていたのだ。
苦しい日々を共有していれば、その先に有る喜びも大きくなる。
勿論、報われたいから応援しているのではない。
応援したい存在だから、応援する。
日馬富士の姿には、その価値が有ったということなのである。
勿論、ムラッ気の有るところは改善しなければならない。
ダメ押しをし過ぎるのは良くない。
そういう面も有ることは事実である。
だが、日馬富士というのは、そういう面を差し引いても
大きな魅力のある、そして実力ある力士だということが
今場所の活躍でよく分かった。
二人の全勝が千秋楽まで続いたとしたら、
それは凄い相撲になることだろう。
その前に、日馬富士が「あいつ」と表現し、
互いに高めあえる存在だと認識している
稀勢の里との対戦も有る。
あと6日間、目が離せない。
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