稀勢の里は、果し合いに来た。白鵬は、勝ちに来た。立ち合いの駆け引きから見えた、両雄の違い。

白鵬対稀勢の里戦。
絶対に外さないと言われている北の湖理事長の
優勝ライン予想によると、今場所は1敗。
つまりは、その仮説を元に考えると事実上の優勝決定戦。
この1年の激しすぎるほど激しい取組の数々、
そして予想を上回る攻防の数々に、
今場所もまた、そうしたものを期待した。
カチ上げ。
張り差し。
流血。
万歳。
相撲であって相撲でない。
総合格闘技を彷彿とさせる、真っ向勝負が生み出す興奮。
今場所は一体どうなるのか。
二人の対戦は相撲の歴史であり、その歴史を目に焼き付けるため
私は夜勤明けで有りながら着物に着替えて
正面マス2列目という素晴らしい席に駆け付けた。
今場所の内容を考えると、白鵬は普通に対戦したとすると
かなり分が悪い。
そこで私は立ち合いの変化と予想した。
だが、結果はその斜め上を行った。


果し合いをしに来た稀勢の里は、真っ向勝負を挑みに来ている。
取組前から稀勢の里は殺気立っていた。
この1年の彼らの激闘の歴史は、真っ向勝負によるものだった。
その中で白鵬は、裏の顔を見せて時に圧倒し、
時に稀勢の里がそれを上回った。
真っ向勝負によって二人は互いに高め合い、
彼らにしか出来ない世界は我々は大いに魅了した。
稀勢の里に綱取りを期待したのは
白鵬を真っ向勝負で倒すことが出来る、
その能力の高さと魅力的な相撲内容によるところが大きかった。
だからこそ、今日も真っ向勝負を観たい。
平日なのに満員御礼。
しかも、イス席もほぼ埋まっている。
観客の期待は、これ以上無いくらいに高まっていた。
会場のほとんどが、真っ向勝負を期待した。
稀勢の里も、期待した。
だが白鵬は、稀勢の里に付き合わなかった。
立ち合いで稀勢の里に合わせて立たない白鵬。
先に突っかける稀勢の里。
二回目、突っかける稀勢の里。
やはり立たない白鵬。
三回目。
行くそぶりを見せる白鵬。
行かない。
一瞬息をつく稀勢の里。
そこで、白鵬は行った。
立ち遅れる稀勢の里。
勝負有った。
果し合いに来たのが、稀勢の里。
勝ちに来たのが、白鵬。
今回の結果は稀勢の里の未熟さ、
という言葉に帰結出来るのかもしれない。
いかなる可能性も想定することが、力士には求められるからだ。
だが、今日の結果について私は稀勢の里を責められない。
何故なら今日は当然、果し合いをするものだと思っていたし、
私はそれを期待していたからだ。
稀勢の里はその期待に応えようとして、敗れた。
純粋さゆえの敗北。
そして、純粋さゆえの未熟さと言えるだろう。
白鵬は、勝負に徹した。
ただ、勝ちたかったのだ。
勝つことこそ、横綱の存在意義。
それを土俵上で表現した。
そこに観客の意思など要らない。
強くある姿を見せつけた。
今まではカチ上げや張り差しなど、
横綱として裏技とも言える手段に出ることで
他の力士を圧倒してきたが、今回はその技を
立ち合いの駆け引きに見出した。
当然今日の結果に落胆する観客が居ることは分かっている。
だが、勝ちは譲れない。
その覚悟の差こそが勝負を分けたのだとすると、
一体白鵬に誰が勝てるというのだろうか。
稀代の名横綱は、その恐ろしさを改めて見せつけた。
その凄みを焼き付け、しかし果し合いが観たかったことを
残念に思いながら、元力士白馬の店ウランバートルで
モンゴル料理を頬張る私なのだった。
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稀勢の里は、果し合いに来た。白鵬は、勝ちに来た。立ち合いの駆け引きから見えた、両雄の違い。” に対して1件のコメントがあります。

  1. bodybuilder77jp より:

    ごうたろうさんの意見(2014-05-24 14:20 )には賛成できません。ごうたろうさんは<「白鵬は終始、淡々とペースを乱さないで仕切っている。対して稀勢の里は「今度はどうしても勝ちたい」という力みが見え、最初の立会から突っかけた。>とされますが、私の目には稀勢の里は普通の(互いに1回目で立とうという)立ち合いの態度に見えました。対する白鵬は初めから立つ気は無く、2回・3回と待ったを重ね(させ)、稀勢の里に満足な立ち合いをさせないことを狙いました。見ていて明らかです。まともに立ち合って勝てる自信が無い白鵬の作戦勝ちでした。私は稀勢の里より、白鵬が好きだったのですが、先場所と今場所の対稀勢の里戦の立ち合いを見て、複雑な気持ちになりました。ごうたろうさんは「稀勢の里に勝たせたいという多くの方の想いが、白鵬が立ち合いの駆け引きで勝ったとか、その駆け引きで勝ったことがよくないとかそういう論調になっている。」とされますが、私は稀勢の里に勝たせたいと思っていたわけではありません。ついでに言うなら早く日本人の横綱が誕生してほしいとも思いません。日本人だろうが外国人だろうが、強く立派な人にのみ横綱になる資格が有ると思っています。そしてそういう人には駆け引きを弄さず、すばらしい横綱相撲を取ってもらいたいと思っています。最後に昨日(5月25日)日本相撲協会に送ったメールを載せます。
    ___________________________________________________
    私は先場所(2014年3月場所)と今場所(2014年5月場所)白鵬が稀勢の里戦で見せた立ち合いの駆け引き(相手十分の立ち合いにならないように、わざと遅く立つ、というより、立たないで何度の待ったに持ち込む。3度目あたりでこっちの呼吸で立つ=相手に遅れを取らせる)で勝利をものにするという汚い相撲が残念でした。私は稀勢の里より白鵬のほうが好きでしたが、横綱がこんな姑息な手段で勝つということには後味の悪いものを覚えます。白鵬は双葉山を尊敬しているそうですが、こんな勝ち方を天国の双葉山に見せて恥ずかしくないのでしょうか。横綱は自分自身の成績とともに大相撲全体の盛り上がりも考えてもらいたいものです。正々堂々と受けて立ち稀勢の里との白熱した一番を見せる義務が横綱に有るのではないか、観客や視聴者の気持ちを考える必要が有ったのではないかと思います。綱の重みは単に勝つことだけではないはずです。

  2. 角犬 より:

    白鵬は立たなかったというより立てなかったように見えました。
    稀勢の里戦だからといって特にゆっくりしているようにも見えず、いつものリズムだったと思います。
    あの日の稀勢の里は白鵬が片手をつく前にすでに立っていました。明らかに早すぎました。立ち後れまいという気持ちが強すぎて気負ってしまったのでしょう。稀勢の里の方もきっと白鵬に合わせようとしたのだと思います。でも身体が言うことをきかずに突っかけてしまったように見えました。

  3. しんしん より:

    立ち合いはいつもお互い様。
    白鵬が稀勢の里より強い。
    ただそれだけのことです。
    この二人の取り組みはゴールデンカードだけにいつも熱い戦いであってほしいですね。

  4. 甲乙 丙太郎 より:

    名勝負を演じた過去の名力士たちの立ち会いは「単純明快」でした。蹲踞から立ち上がるまでの早いこと早いこと。学生相撲みたいにじらしたり、立ち渋ったり、ヘンな駆け引きは一切しませんでしたよ。
    若乃花VS栃錦しかり、柏戸VS大鵬しかり、玉の海VS北の富士しかり、輪島VS北の湖しかり。

  5. キセファン より:

    まったく、稀勢の里は純情野郎でした。
    白鵬の勝つ力には脱帽します。
    稀勢の里が上に昇るには3度目の立合いで合わなかった時、
    立たない根性が要るかもしれないけれど、
    あそこで立ってしまう真面目さもまぁキセかなと、
    今はなんだか納得してしまっています。
    やっぱり最後まで応援したい力士です。
    しかし、国技館で間近で見れるのは羨ましい限り。

  6. なの。 より:

    勝負としては完璧。
    興行としては落第。

  7. 管理人 より:

    しんしんさん
    そうですね。
    立ち合いで様々な手段が考えられる以上、
    勝負に勝った白鵬が強いという結論で
    間違いないと思います。

  8. 管理人 より:

    甲乙 丙太郎さん
    そうですね。

  9. 管理人 より:

    キセファンさん
    純情たる弱点を見事に突かれてしまいました。
    そこが愛すべきところなのですが、
    勝負師としては敵わないですよね。
    純情野郎だからこそ出来ることも有ると思います。
    勝負師にどう上回るのか。
    稀勢の里に出来るのは、勝負師になることではないようにも
    思います。

  10. 管理人 より:

    なの。さん
    我が意を得たり、です。

  11. 管理人 より:

    ごうたろうさん
    どうもアンチ白鵬の方も、アンチ稀勢の里の方も
    皆さん冷静さを失っていて、
    自分にとって不愉快なことを全て
    理由を付けて罵っているように思えてならないです。
    あくまでもその物事の善悪のみで判断すべきで
    今回については立ち合いの駆け引きで
    白鵬は勝ち、稀勢の里が敗れた。
    それだけなんですよね。
    そういう選択肢が有る闘いなのだから
    その中で闘うしかない。
    相撲ってそういうことなのだと理解したうえで
    見る必要が有ると感じました。

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