拝啓 白鵬 翔 様(平成28年9月)

拝啓 白鵬 翔 様
この書き出しで始まる手紙を書くのはこれが2回目です。初めての時は、大変怒られた覚えが有ります。あれももう、1年前のことです。
今場所の休場という決断、驚きました。何しろ横綱が昇進してから場所前にそのような決定をされたことは、1度たりとも無かったのですから。
横綱在位が54場所。これだけの長きに亘って横綱の地位を保ち続けていること自体異例のことです。そして、史上最多の優勝回数を更新し続けていることもまた、異例のことです。
しかし、私は横綱が本当に素晴らしいのはいかなる時も出場し続けてきたこと。これに尽きると思っています。
釈迦に説法かもしれませんが、横綱というのは実に多くのものが求められる地位です。ただ強いだけでなく、最近では品格などという言葉が一人歩きしています。11勝でも文句を言われることがあります。解説の北の富士さんはかつて「イレブン横綱」などと揶揄されることも有ったそうです。あのダンディなおじ様も、かつては相当苦労されていたのだと実感します。
横綱は休場しても番付を落とすことは有りません。物議を醸すことになるかもしれませんが、ある意味で休場が許される地位だと言えると思います。ですから、過去の横綱達は休場を一つの選択肢としてきた経緯があります。たまにWikipediaで横綱達の戦績を見る事があるのですが、皆さん結構休んでいるんですよね。
でも、横綱はここまで殆ど休まずに土俵に立ち続けてこられました。横綱昇進後の休場自体、去年の9月場所が初めてでした。本当に頭が下がります。
しかも、横綱は巡業すら全て出られている。年間160日以上取組を取られている。私など夜勤の翌日の日勤でヤマダ主任(仮名)に文句を言いまくっているというのに。何故そのようなことが出来るのか。
数年前の出来事によって相撲人気が低迷し、少し前大相撲は存続自体危機を迎えていました。そういう中で横綱としての強さを見せ続けて、信頼回復に努めてきたのが横綱です。本場所で強さを見せ、さらには全国でも顔を見せて大相撲の地位向上に尽力する。
このような力士は歴史上で横綱だけです。
そういう横綱だからこそ、今思うと私は多くを求めすぎたように思います。私の思う横綱像を押しつけてしまったのかもしれません。だからこそ、最近の横綱の取組や土俵を降りた後のインタビューに思う部分があったのだと感じています。
横綱の一挙手一投足を見て、一喜一憂する。それは横綱の大きさ故です。一人に一つの横綱が居ます。人の数だけ意見が出てきてしまいます。大変な立場なのだと普段から思い続けてきましたが、そこに居るとつい一言言いたくなってしまいます。自分でも理不尽だとは自覚しています。
猫騙しも、変化も、カチ上げも、横綱以外だったらここまでニュースにも議論にもなりません。ニュースにすらならないかもしれませんね。でも、横綱:白鵬がそれをするとニュースになる。議論が起きる。批判も賞賛も巻き起こる。全ては横綱:白鵬だからこそです。
しかし、こうしてひと時でも土俵を離れられたことによって、私は横綱:白鵬の存在の大きさを再認識しました。やっぱり私はいろいろ言うこともありますけど、横綱:白鵬が観たいんですよ。横綱の居ない土俵は寂しいもんですよ。
「いつまでも有ると思うな、親と金」と中学時代の担任の先生が卒業前、最後の言葉として話していました。卒業式で言うことなのかと当時は思いましたが、こんな言葉を久しぶりに思い出すほど今回の横綱の休場には色々と感じました。
恐らく勝っても負けても稀勢の里関は今場所、色々と文句を言われると思います。それは横綱の居ない中で結果を出しても、横綱が居たらどうだっただろうか、とつい考えてしまうからです。そして、横綱が居ない中で結果を残せなければ、不甲斐なさを感じてしまうからです。
横綱が居るからこそ、それを倒しての優勝には価値があります。横綱が居なければ、それだけで議論の対象になってしまいます。それほど横綱の存在は大きいんですよ。今更ですが。
大相撲にはまだまだ白鵬が必要です。将来の横綱も大関も見えないのが現状です。だからこそ強い白鵬が君臨し続けて、未来を担う力士を作って欲しい。最強横綱が居るから優勝回数が伸びないのではなく、最強横綱が居たからこそ更に強くなったと思うような、そういう存在を生み出して欲しいのです。それは、横綱が白鵬だからこそ出来ることです。
今はただ、養生なさってください。
九州場所でお目にかかれることを心待ちにしております。
その時はまた、文句を言うかもしれませんが、ご容赦下さい。
敬具
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9月25日に千秋楽を大人数でワイワイテレビ観戦する会をやってみようと思います。参加を希望される方はmakushitasumo@gmail.comまでご連絡下さい。
ただし、これまでとは少し趣向を変えて、「40歳以下」という縛りを設けてみたいと思います。同じくらいの世代で一緒に相撲を観る機会が無い、という声に応えるのか目的です。あと、千秋楽は盛り上がるのにチケットが入手しづらく、一人であたふたすることが多いことも理由の一つです。
東京近郊で、16時間から開催予定です。詳細は後程連絡します。普段よりもこぢんまりとした感じになると思われますので、お気軽にお声かけください。なお、人数次第で中止の可能性も有りますので、予めご了承ください。
それでは、お待ちしております。
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拝啓 白鵬 翔 様(平成28年9月)” に対して1件のコメントがあります。

  1. shin2 より:

    先月の末「白鵬 稀勢の綱獲りに私見 5場所連続準Vなら『上げても…』」という記事が出た。
    >>http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160831-00000034-spnannex-spo
    現役の横綱が他の力士の番付編成にコメントするのは如何なものか、と思ったが、白鵬の悪癖の一つ「不必要で間違ったリップサービス」(以前の審判批判とか)がまた出たか、ぐらいに思っていた。
    この記事が出た後、白鵬は体調不良を訴え、秋場所を休場することになるわけだが、
    「白鵬 傷だらけ…秋場所全休発表 稀勢に綱獲りエール」
    >>http://www.sponichi.co.jp/sports/news/2016/09/09/kiji/K20160909013320970.html
    今度はエールである。
    まあ世間話が記事になっただけかも知れないが、ちょっと白鵬らしくないなあ、と思った(休場表明で強気のコメント出すわけもないのだけれど)。
    なお、白鵬がエールを送ろうが、休場して対戦がなくなろうが、稀勢の里はいつもの稀勢の里だろう。
    名古屋場所、鶴竜・琴奨菊・大砂嵐の休場で、本来なら対戦するはずがなかった松鳳山の立合いの変化喰らって、テレビ解説の舞の海を沈黙させている。

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