琴欧洲の自滅に見る、稀勢の里の格付け。
稀勢の里の大関取りについて、
今日は非常に興味深い点が有った。
本来幕下専門のブログではあるのだが、
幕内の相撲も勿論観ているので
たまには旬な話題について語ってみようと思う。
今さらではあるが稀勢の里は全2場所で10勝・12勝と、
今場所11勝すれば大関昇進が決定するという立場である。
恵まれた体躯。
スケールの大きい取り口。
若くして入幕したという経歴。
こうした要素からも
その資質を疑う者は誰も居ない。
しかし、彼が大関に成れるか?という観点から
質問をすると、疑問符を付ける人は相当な割合で
存在することだろう。
これもまた知っての通り、
これまで数度大関取りに挑み、そして
その壁に跳ね返されてきた経緯が有る。
そんな訳で、期待を掛けるに値するのは間違いないが
過度な期待をするには失敗事例が多すぎる、
というのが稀勢の里に対する一般的な評価である。
それを踏まえたうえで、今日の取組についてである。
ここまで6勝1敗で、文句なしではないが
順調ではある稀勢の里が大関の琴欧洲に挑む、
というのが今日の構図である。
抜群の立会いを決めた琴欧洲。
まわしを取りたい稀勢の里は手を掛けるが、
琴欧洲は突き押しを進めながらも
稀勢の里の狙いを封じる。
ズルズルと後退する稀勢の里。
稀勢の里の足が徳俵に掛かったところで、
一気に寄る琴欧洲。
しかし、腕が伸びきって重心が
上半身に残ってしまった琴欧洲は
身体を反転させた稀勢の里を捉える事が出来ず、
土俵に落下してしまった。
かくして、相撲内容では琴欧洲が圧倒しながら
稀勢の里の勝利という結果に終わった。
ここで非常に重要なのは、
琴欧洲は相撲内容で勝っていながら
敗れてしまったということである。
通常取りこぼしというのは、油断や慢心から
雑な対応をしてしまったことが致命傷となって
発生するものだ。
しかし、今日までの琴欧洲はここまで1敗で、
優勝争いをする立場に有る。
そして、相手は大関取りの掛かった稀勢の里である。
つまり、状況的な側面を考慮すると
油断や慢心が原因であるとは考え難いのだ。
では、なぜ琴欧洲は取りこぼしてしまったのだろうか。
相撲内容を振り返ると、二つのポイントが有る。
・琴欧洲は抜群の立会いを決めた
・土俵際まで突き押しを進めたが、態勢を崩して
突き落としに遭った
油断せずにこうした相撲を取った、ということは
真逆の要因こそが琴欧洲を自滅へと導いたのではないかと
考えられる。
そう。
琴欧洲は、稀勢の里を意識しすぎたのである。
油断ならない相手だからこそ、
万全の立会いを決めなければならない。
強い相手だからこそ、
早く勝負を決めてしまいたい。
よく考えてみると「試合に勝って勝負に負けた」というのは
横綱や大関を相手にした平幕がよくやる取り口で、
いいところまでは行くのだが、結局負けてしまう。
相手を強いと認めているからこそ力が出る。
そして、強いからこそ平常心を失い、
勝負どころで致命的なミスをしてしまう。
考えてもみてほしい。
取るに足らない相手だとすれば、
会心の立会いを見せるだろうか?
取るに足らない相手だとすれば、
絶対有利の態勢から自滅するだろうか?
琴欧洲は、稀勢の里を認めたのである。
明日以降の関門も、稀勢の里を認めさせる戦いである。
把瑠都は、日馬富士は、琴奨菊は、
稀勢の里を認めるのだろうか?
注目である。