佐久間山と吐合の奇妙な縁。
佐久間山の連勝が話題である。
日大出身で、元学生横綱。
今年の7月にデビューし、序の口・序二段・
三段目と圧倒的な内容で全勝。
ここまで21勝。
気が付けばデビューから26連勝という、
これまでの記録を意識せざるを得ない状態になっていた。
記録保持者が板井であり、相撲界にとっては
八百長問題も含めて踏み絵的な存在だったことも
重なって、佐久間山の記録更新は俄かに熱気を帯びてきた。
だが、幕下の番人達は、佐久間山にむざむざと
敗れるようなマネはしない。
大相撲の奥深さを、様々な手を尽くして見せつけるのだ。
大学出身の力士については全体的に能力が高く、
実力差が有れば大概の場合は全く問題にしないのだが、
学生相撲と大相撲では明らかに異なる点が有る。
その最たるものが立ち合いなのだが、
今場所の佐久間山はこれに苦しむことになった。
つまり、いきなり劣勢を強いられてしまうのである。
前ミツを刺され、腰が伸びた状態で
土俵際まで追い詰められる。
腰が伸びれば相手に力が伝わらない。
逆に前ミツを取れば自分の力を相手に
伝えやすい状態になる。
相手は絶対有利。
自分は絶対不利。
普通、このような状態になれば、
貴ノ浪のように腰が伸びても力が発揮できる
巨体の持ち主でもない限りは逆転不能に陥る。
佐久間山の抱える弱点とは、このように
普通で有れば致命傷になることがお判りいただけたであろう。
だが、佐久間山は絶対不利の態勢にもかかわらず
土俵際の投げや閂など、限られた選択肢の中で
異次元の力を見せることで逆転勝ちを収める。
普通はこのような形での逆転は起きにくい。
何故なら普通は実力的に拮抗した相手との
対戦を組むのが大相撲のマッチアップだからだ。
それでも佐久間山が結果を残せるのは
彼が幕下ではずば抜けた能力を誇り、
多少の不利でも身体能力と技術でカバーできるからである。
型破りな相撲は、誰もが自らの定規で
能力を推し量ることが出来ないため、
その将来を想像することが非常に楽しい。
今後どのような力士になるのか、
また立ち合いの弱点を克服したら
どこまで通用するのか、
こうしたことを想像させるだけでも
佐久間山には価値が有るのである。
相撲は300年の歴史が有り、
あらゆるタイプの力士が過去に存在しているのだが、
想像もつかない歴史の中で新たな記録を残せる
ということは、それだけ規格外ということだ。
そんな力士をリアルタイムで観られること自体、
非常に貴重なことだと言えよう。
今この時間に土俵で起きていることは、
今後観ることだ出来ないかもしれない。
そして、佐久間山と不思議な縁で繋がっているのが
あの吐合である。
実は、この二人はこんな共通点が有る。
元学生横綱。
北の湖部屋。
そして、今場所ここまで全勝。
だが、これまでの経緯については
光と影というべきコントラストを放つ。
片やデビューから無敗の連勝。
片や番付外まで転落し、8年もの歳月を掛けての再起。
何という差であろうか。
22歳までは同じ道を辿ってきたものが、
怪我が再起の道を果てしなく険しいものにしてしまった。
佐久間山も、吐合になる可能性はあったのだ。
そして、吐合も佐久間山になる可能性があったのだ。
辿った経緯は異なるかもしれない。
しかし二人は同じ目標を目指して
明日7勝目を掛けた大一番に臨む。
二人に、幸有らんことを。
nihiljapkさん初めまして。rogueと申します。
ブログ開始当初から楽しく読ませてもらっていましたが初コメさせていただきます。
最初の頃のキレのある笑いを封印なされる程しびれる展開が続いておりますね(ちなみに自分が一番つぼったのは、日常に秘められた地雷・蒼井そら編でしたw)
それにしても吐合という男はつくづく運のない男ですね。
初めての十両圏内での6連勝が、記録男の佐久間山と同場所でしかも同部屋とは…
せめて、部屋が別で相星決戦ができれば負けてもあきらめが付くものを、同部屋では優勝決定戦にならなきゃ対戦もできない。
吐合は十両入りが6勝で濃厚かもしれないが七番相撲は是が非でも勝たなきゃ埋没してしまう。(次で佐久間山も黒星かもしれませんが)
佐久間山と吐合、両者とも複雑な想いでしょうね(特に吐合にとっては)
これもnihiljapkさんのおっしゃる”吐合に有りがちな試練”ってやつでしょうか。
優勝して関取になってくれよ。がんばれ吐合。