平戸海は歴史上の力士だと誰に近いのか。データから検証した
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平戸海の充実ぶりが最近凄い
平戸海の充実ぶりが凄い。
上位総当たりの地位に昇進したときはどれくらい負けてしまうのかと心配しましたが、あっさり勝ち越しを決めました。
好調だったから勝ち越せたのかなと思ったら、三役に上がっても勝ち越しました。
それだけではありません。相撲の内容が素晴らしいのです。
当たりの威力が上位でも随一になってきており、当たり勝つとそのまま持っていくことが出来るかなり危険な力士になりました。
大関の座を明け渡したとはいえ、今場所も霧島には勝っていますし、通算成績でも勝ちが先行しています。
何よりも今絶好調の大の里との相性がいいんですよね。大の里側から見るとかなり厄介な相手で、どうも平戸海が攻める展開になりがちです。
ただ今年24歳になる平戸海は中学卒業の年齢で入門しているので、私からするとまだ幕下の頃のイメージが残っています。
そのため、幕下のイメージで捉えて「まだもう少しかかるかな」と思っていたら十両も幕内下位もあっさり突破して、上位総当たりでも勝ち越せる力士になっていた。
たまに居ますよね、そういう力士。
下位のイメージを引きずっていたら、想像以上に強くなっていて、イメージと地位が合わなくなっている力士。
少し前だと勢とか、最近だと大栄翔あたりですかね。大栄翔なんか2017年くらいに初めて総当たり圏内に入った時に果たしていくつ勝てるんだろう?って考えてしまいましたからね。
平戸海は三役までほぼ停滞せずに出世している
でも、平戸海の成績を紐解いてみると、結構意外な事実に気づいたんです。
それは、デビューから9年で殆ど停滞していないということなんです。
ここまでの地位を見てみると、半年以内に自己最高位を更新し続けている。貴乃花のような記録的なペースで昇進した力士であればこのような事例はあるのですが、平戸海に当てはまるとは思いませんでした。
しかし、それにしては昇進のスピードが遅くないか?そう思う方もいらっしゃると思います。
停滞はしていない一方で、大きく勝ち越している場所も少ないのです。
若いころから4勝3敗や5勝2敗が多く、大きくジャンプアップしていないことからスピード出世にはなっていません。
しかし、少しずつ番付を上げていくことによって実力を着実に付けてきた力士だと言えるでしょう。振り返ってみると、このような力士って私の中であまり記憶にないんですね。
記憶にないタイプだからこそ、今後どのような成績を残す力士になるか想像がつかないんですよ。
なお、トークライブでも何度か触れているように、どんなに遅咲きと呼ばれている力士であっても、大関以上になるには25歳までに初三役という条件をクリアせねばなりません。
これを上回っても大関になった力士は居ますが、割合はかなり少なくなります。
そういう意味で平戸海は出世のスピードという観点で見ても遅くはないですし、むしろ有望株と呼ばれるような存在だと言えると思います。
平戸海の成長曲線と似た力士は少ない
平戸海の特徴を箇条書きにしてみましょう。
・中学卒業の年齢で入門
・自己最高位を更新し続けている(停滞していない)
・スピード出世という訳ではない
・24歳で初三役
・三役になってからも勝ち越せている
平戸海と同じような特徴で出世してきた力士を探してみましたがこれが結構難しい。
壁に当たらずに、でも階段を2段飛ばすようなペースではないというタイプがまず少ないんですよ。どこかで停滞するか、駆け上がっていくかになってしまう。
停滞せずに10年くらいかけて三役までたどり着くという事例が見つからない。
そしてもう一つ難しいのが、三役昇進したあとですぐに定着できた力士も少ないんです。
この手のタイプの力士はどうも、上位総当たりのところで一度壁に当たる傾向にあるようで、この地位で大体苦戦しているんです。
そして大半の力士が不思議なことに三役に定着せずに幕内でいわゆる「エレベーター力士」になっている。
それくらい、三役からは厳しいってことなんです。
だから今の平戸海って本当に充実しているし、ここまでの積み重ねが今になって実を結んでいる。
前置きが長くなりましたが、平戸海のような特徴を持つ力士を見てみましょう。
平戸海に似ている力士4選
1.若の里
若の里については平戸海と少し異なる部分がありまして、それは怪我をしているということです。
元々デビュー場所の序ノ口の頃に15歳で優勝してしまったように、その素質は若いころから光っていましたが、幕内に昇進してから2度ケガをしており、休場を挟んでいます。
そのため、三役昇進は実力と比べると少し遅れたという印象ではありますが、幕下以下の頃に大きくジャンプアップしていないという意味では非常に似た成長曲線を描いていると言えるでしょう。
2.貴闘力
子供の頃の記憶だと「鎌苅」という珍しい名字の若手が関取になるということで非常に印象深かったのですが、それほど出世は早くはなかったというのが意外でした。
記憶と実際の成績との間で異なっていたのは、幕下上位からはほぼ負け越すことなく関脇までたどり着き、上位に定着しているということでした。
ちょっと意外だったのは、幕下昇進後に壁があり、三段目と幕下を過ごした期間が比較的長かったということです。合計で28場所ということで約5年をこの地位に費やしたことになります。それが理由でスピード出世の部類には入らなかったということだと思います。
3.黒姫山
この辺りに入ってくるともう伝聞や昔の映像を見たというレベルの力士になってきますが、入門からじわじわと力を付けて三役まで壁無く来た力士だと黒姫山が挙げられます。
黒姫山の場合は22歳の時に初三役でしたので出世は早い部類に入りますが、ここで負け越して約3年間は上位総当たりで勝ち越したり負け越したりを繰り返します。小結で初めて勝ち越したのは25歳の頃なので三役で壁があったという意味では平戸海とは少し異なります。
ただ、上位総当たりでも大きく負け越している訳ではないので、上位で戦える実力を初三役の頃から身に着けていたという意味での共通項はあるかと思います。
4.大麒麟
大関昇進者の中で同じ特徴の力士が居れば平戸海の可能性も広がると思い期待半分、不安半分で見たところひとりいました。大麒麟です。
大麒麟も最高位をじりじり更新した力士ですが、彼の場合は十両に大きな壁がありました。16場所経験していますのでおよそ2年半。その後は幕内下位・中位を一気に抜けて上位総当たりに定着してしまいます。
このまま三役に定着しますが、勝ち越せるし大関に手がかかるけど何度か逃している。麒麟児から大麒麟に名前を変えた直後に大関に昇進した。
強い三役から大関に昇進できたという意味でも稀有な力士と言えるのかもしれませんね。
平戸海のこれからは怪我しないことが大事
こう見ると平戸海に似た特徴を持つ力士は少ないながらも、強い三役、そして大関経験者も出てきた。これは平戸海にとって非常に良いことだと思います。
今は充実していることもあって成績も安定していますが、激しい相撲が続けば力を出し切れないコンディションになることもあると思います。その時が平戸海の真価が問われるときではないでしょうか。
特に突き押しというスタイルはコンディションに左右されることが多いので、相手力士をどう攻略するか?という視点も大事ですが、自分との闘いという側面も大きくなります。若くして大関になるも、満身創痍で現役続行の危機に瀕する貴景勝を見ているとその思いが強くなります。
今場所も好調で、今日は同学年の大の里との対戦が控えています。
果たしてどのような結果になるのか。楽しみです。