服部桜2勝目。最弱力士のサクセスストーリーとは異なる、服部桜ならではのドキュメンタリーが持つ意味とは?

服部桜が独り歩きする、2018年。

服部桜2勝目というニュースが大きく取り上げられた。

1勝111敗1休。
そして、敗退行為。

最弱力士という好奇の眼差しは、勝負から逃げるという前代未聞の行為が更に拍車を掛けた。名前は知らずとも、例の騒動について知っている人は多い。私の職場の相撲に興味が無い同僚でさえも「西尾さん、あの力士誰でしたっけ?」と先のエピソードを語り始めたのには驚いた。そんな「あの」服部桜の2勝目である。

こういう存在にスポットを当てたがる時代だ。目立とうとしていなくても目立ってしまう存在を祭り上げてしまう。かつてであれば知っている人は知っている、だが知らない人は知らない。そうすることによって秩序が保たれてきたと私は思っている。

過去に服部桜についてはこのような記事を書いているので、是非ご覧頂きたい。

序ノ口力士:服部桜の3度に亘る敗退行為に、深い悲しみを覚える。:
敗退行為の後に待ち受ける茨の道。生きろ、服部桜。:
「敗退行為」から1年。「最弱力士」服部桜の今。

だが、その有り得なさを安全圏から覗き見るような楽しみ方が、今の世の中では通ってしまっている。誰もがyoutubeを通じて動画を上げ、SNSで拡散できる時代なのだ。そしてSNSで拡散されたことを後追いでメディアが取り上げる。最近のニュースはこのようなものばかりだ。

そして私も、服部桜の敗退行為については結果的に拡散に加担してしまった。面白おかしく敗退行為が取り上げられる風潮になることが予想されたからこそ、大相撲はそういうものではないと伝えねばならなかったとはいえ、ブログ記事の後であまりにニュースとして取り上げられることが多く、恐ろしさを感じたものである。

メディアの祝福と、違和感。

そういうメディアが、今回の2勝目を祝福している。
いや、正しくは祝福しているSNSを取り上げている状態だ。
とりあえず、これでよかったと思う。

最弱力士が努力を重ねて少しずつ強くなった。
諦めないことが実を結んだ。
おめでとう、服部桜。

特徴的な論調は、こんなところだ。

ただ、一つだけ。
いや、一つ大変な間違いがある。

そう。
服部桜は、少しずつ強くなってきたわけではない力士だということである。

先の騒動の前から、私は服部桜を追い掛けている方と何名も知り合うことが出来た。服部桜チャンネルというyoutubeのチャンネルを立ち上げている方さえ居た。聞くところによると、2勝目に涙が止まらなかった方が続出したそうである。

そんな話があるのだから、私は彼らが服部桜の真摯さに打たれて応援しているものだと思っていた。だが、話を聞いてみるとどうも違う。服部桜を追い掛けている方の一人は、こう語った。

服部桜の実像と、応援する心理

「服部桜は心技体、全てに於いて弱い」

体は伴わないが、気持ちだけは誰にも負けないということだとしたら、努力で補おうとしているということだと理解出来る。誰よりも稽古に熱心ということなのかと考えてみたのだが、この話を聞く限りではそういう訳でもない。だが、彼らは服部桜のことを面白がって観ているという訳でもない。

服部桜に批判的な方達は、彼を擁護する人に対して服部桜の心技体を否定する。辞めるべきだ、応援に値しないと言う。しかし彼らからすれば、そんなことは織り込み済みという訳なのである。

ある時服部桜はかなり土俵際で残せるようになった場所が有ったと聞く。だがその翌場所に、あっさり土俵を割るように戻ってしまったのだ。少しずつ前に進んでいるのではない。3歩進んで2歩下がるということですらない。

服部桜を観ると言う行為は、突き抜けた弱さを備えた力士が思い悩み、必ずしも前に進んでいる訳ではないのだが、後退しながらも前に進むというドキュメンタリーに積極的に関わっていくことの魅力故に成立しているのではないかと思うのである。

彼らは服部桜の家族同然だ。序ノ口力士の事情にあまりに詳しく、服部桜が勝てるかもしれない力士や、どうすれば勝てるか、といったところまで事細かにシミュレーションさえしている。服部桜ウォッチャーが興じて序ノ口下位に詳しくなるのだから、面白いものである。

土俵に立ちたいという服部桜が居る。土俵に上がれるルールが有る。そして、服部桜というドキュメンタリーを楽しみ、2勝目を心から祝福する人が居る。いいか悪いかではなく、そういうことなのだ。

そして最後に服部桜の2勝目が重大な意味を持つ理由ことに、私は触れたいと思う。これで服部桜は、仮に相撲を辞めても負けたままで引退した力士ではなくなったということである。

◆14日目観戦会のお知らせ◆

7月21日15時より阿佐ヶ谷「ろまんしゃ」で大相撲名古屋場所テレビ観戦会を開催します。
参加をご希望の方は以下のサイトよりご予約下さい。

観戦会の予約サイトはこちら。

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