序ノ口力士:服部桜の3度に亘る敗退行為に、深い悲しみを覚える。
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服部桜とは
昨日私は、朝8時の相撲について記事を書いた。
相撲としては最弱かもしれないが、勝ちを目指す相撲は感じるものが有る。だから、一度は観ておくべきだという話をしていた。強さと弱さを超えた、朝8時の相撲の知られざる世界。
だが、その数時間後に前代未聞の出来事が両国国技館で起こっていた。それも、他ならぬ朝8時の土俵で。
服部桜。
昨年11月にデビューした、180センチ70キロという力士だ。体格からも想像が付くかもしれないが、彼は11月から22連敗を記録していた。5月に初勝利を挙げた時は、少し話題になったほどである。
その彼が、信じられないような相撲を取った。
本来ならばこの話題は出したくなかったし、私の意図とは逆の方向で話が広まる恐れも有る。不名誉な話を拡散するのは不本意なのだが、不名誉と真逆の話を書いたばかりなので大相撲の名誉のためにもこの話題に触れることをお許し願いたい。
服部桜は、自ら敗れることを選んだのだ。それも、3度も。目撃情報も写真も相当な数で回っているので、残念ながらこれは事実だ。
信じ難い取組の、一部始終
一度目は、手を付いた後で掌を付いた。
二度目は、土俵にそのまま飛び込んだ。
三度目は、自ら尻もちを付いた。
行司もさすがにこれで決着は付けられなかったのだろう。だからこそ、このような行為が三度に亘って行われても、取り直しという裁定を下した。だが、四度目でも相撲らしい相撲が取られることが無いまま、服部桜は敗れた。
この行為に対して言葉の限りを尽くして批判したい気持ちも有る。ただ、今服部桜を批判することは何も産み出さないのである。強さだけが評価の対象となる大相撲で、弱いのに現役を続けるという行為は受け止めることが非常に難しい。序ノ口序二段という最下層から抜け出すどころか、そこですら勝てない。それでも、引退を勧告されても自らの意志で現役を続行する。そういう相撲には、誠実さが有る。だから感じるものが有る。
そして、最弱とまではいかないが、少しだけ上の地位で相撲を取り続ける力士も居る。このような地位の現役力士と話す機会が有ったのだが、共通しているのが燃え尽きることが出来ないことだった。相撲に誠実になれず、だからと言って次の道に進む踏ん切りが付く訳でもない。自らの弱さに絶望しながら、自分を見切る決断も出来ない。そういう相撲には感じるものが全く無いが、一方でその迷いには感じるものが有る。一生懸命になれることも、一生懸命になれないことも、相撲の一部だ。そして、生きることの一部だ。だが、自ら敗退を選ぶことを生きることの一部として認める気にはとてもなれない。
最弱力士という話題は、誤解を産みやすい。だが、最強が居れば最弱も居るのが勝負の世界だ。たとえ最弱であってもそこに甘んじることなく、強さを希求するからこそ最弱力士に名誉が有ると私は思う。それもまた、大相撲の一部だ。弱さにチャーミングさが有るのはそういうことだ。
この取組が肯定されてはいけない理由
たとえ弱くても、力士は強さを求めるからこそ力士だ。そして、強さを求め切れない弱さが有ることも、多くの力士が抱えるジレンマだ。強さを求めなくなった瞬間に、力士は人に戻っていく。
服部桜は力士ではない。
もはや只の人である。
大相撲は人気を回復したからといって、今も尚大変誤解されやすい競技であることは間違いない。数年前の問題から誤解や偏見は更に深まり、ポジティブに評価することは大変難しくなった。手軽に感動することを求め、また、手軽に面白いことを求める時代だ。珍妙な敗退行為を続ける最弱力士の存在など、すぐに拡散されて、面白おかしく伝えられることは容易に想像が付く。それはこのような時代だから、仕方が無いことだ。私だって別ジャンルでこのような突拍子の無い話題が有れば、喰い付くことだと思う。
下位の力士でも強さを希求するという文化を共有しているからこそ、「デブの丁髷が円の外に出すか倒すかしたら勝ち」という珍妙な競技は一定の理解を得るに至っている。だが、力すら求めない力士の存在は、大相撲の根幹を揺るがすことにも繋がりかねない。
断っておくが、このような取組はほぼ起きない。
このような力士は本来存在するものではない。
全ての力士のためにも、大相撲のためにも、敗退行為は有ってはならない。深い悲しみを覚えながら、そんな当然のことを考えた。
■追記◆
服部桜関連で以下の記事も更新しております。
敗退行為の後に待ち受ける茨の道。生きろ、服部桜。:
「敗退行為」から1年。「最弱力士」服部桜の今。
服部桜2勝目。最弱力士のサクセスストーリーとは異なる、服部桜ならではのドキュメンタリーが持つ意味とは?
動画見ましたが悲しくなるというより心配になる感じでしたね…
むしろ裏に何もなく、本人の気持ちで単に敗退行為を行ってるだけならいいんじゃないかと思うくらいです
土俵にたった時点で、彼はただの人よりちょっと力士。
土俵にたったことも無い人間が彼のことを貶めてはいけないはず。
いつも楽しく読んでおります。わたしも本文とほぼ同感でした。
相撲について詳しくないのでお教えいただきたいのですが、なぜ彼はあのような振舞いをしてまで力士でい続けるのでしょうか?お金でしょうか、他に仕事が無いからでしょうか、部屋の関係とかそういう素人には分からない何かでしょうか。
正直あのような生き恥(に私思えます。それは弱いからではなく、強さを積極的に放棄しているからです)を晒すくらいなら、コンビニで働いた方が良いと思えるのですが…
3度も4度もやらかしてるのに土俵の周りにいる人たちは止めないのでしょうか…
例の試合、youtubeで見ました。
「酷い」の一言しか浮かばない。
命がけで闘っている力士に失礼すぎる。
1回目の立ち合いはすぐに掌をつく。2回目は土俵にダイブ。
3回目は後ろに倒れて尻もち。
力士としてあり得ない。
間垣親方、いや、時天空関がもう一度立ちたかった土俵、安美錦関がもがいている土俵を何だと思ってるのだろう。
服部桜はまだ若い。先がある。
何も相撲に固執することはない。
彼は相撲以外の道を探すことを考えたほうが良いかもしれない。
大相撲の根幹を揺るがす行為で、序の口だから許されるなんてことはない
最悪な一番と言ってもいいんじゃないと思います。
服部桜が行った行為は、土俵に上がる者として絶対にしてはいけない行為
相撲の歴史を汚す行為だと思います。
八百長で相撲界を去った力士同様に、相撲界を去るべきだと思います。
同時に式秀親方にもなんらかの処罰を求めます。