御嶽海に求められるのは消去法ではない。心を掴む優勝である。

御嶽海の独走に手に汗を握れない不幸

快進撃。
だが、盛り上がらない。

遂に、本格化。
だが、時代を切り開くほどの期待には至らない。

膨らんできた期待感を、自ら抑えようとしているのではない。
むしろ、眼下の快進撃の価値さえ疑おうとさえしている。

ここまで言えば誰のことかはお分かりだと思う。御嶽海のことだ。

思えば御嶽海というのは最高に幸運で、不幸な力士だ。

怪我をせずに大関候補になれた幸運

まず、幸運の方から考えてみよう。それは、時代の変わり目に充実期を迎えたことである。

大卒力士というのは、デビューから最高位まで上り詰めるのが非常に早い。言い換えると、一度壁に当たるとそれの乗り越えることはあまり無い。完成度が高く、幕内上位まで壁らしい壁に当たらずに来られるが、この先でいきなり相撲の質が変わるのである。

叩き上げであれば相撲の質も、体型も徐々に伸びていくのだが、相撲の質も体型も上位仕様にチューンアップ出来ないまま大卒力士はこの壁に対応せねばならない。だからこそ、上位総当たりに挑戦して間もなく多くの力士が怪我をしてしまう。

最近の大卒力士の多くがこのパターンで壊れ、相撲のスタイルを変える必要に迫られた。ある力士は当時の相撲を失い、当初の期待を思うと寂しい地位で苦しい闘いを強いられている。このパターンにより、稀勢の里以降の世代が殆ど時代を担えずに居る。

御嶽海にとって最大の幸運は、大きな怪我をしていないことだ。彼のような力士にとって、膝の故障は力士人生を大きく左右することになるが、今のところそれは問題ない。

御嶽海の台頭と時同じくして、白鵬は休みがちになり、稀勢の里は致命傷を負った。鶴竜は進退を賭けて出場をするほど状態が悪化し、日馬富士に至っては引退を余儀なくされた。

大関を見ても琴奨菊は陥落し、豪栄道は大関を守るのが精一杯だ。2011年以降で上位がこれだけ満身創痍な時期は殆ど無い。更には、台頭する力士さえもここ数年では高安と栃ノ心だけである。しかし彼らとて30前後だ。若手と言うよりは中堅、いや、ベテランという見方でもおかしくはない。

大きな怪我も無く、周囲が軒並み不安を残す中で相対的に存在感を増しているのが、今の御嶽海なのである。これを幸運と言わずして何を幸運と言うのか。これほど時代に愛された力士も類を見ないのではないかと思う。時代を守るベテランは衰え、下から突き上げる若手も時代的に産まれにくい。少し前であれば台頭する前に怪我をしていたかもしれない。そして、少し後であれば貴景勝や阿武咲が実力を付けていたかもしれない。

御嶽海が昇進するには、恐らく今しか無かったのである。

だが一方で御嶽海にも不幸がある。
それは、コインの表と裏と言えることだ。

そう。
世代交代が、果たせていないのである。

時代を切り開けなかった不幸

御嶽海の相手は、傷ついた横綱か地位を守ることに苦しむ大関ばかりだ。いや、この説明は正しくない。何故なら、横綱や大関は出場さえ少ないからだ。

御嶽海も成長している。だが、上位の衰えは更に顕著だ。残念ながらどちらかと言えば後者の方が際立つので、御嶽海の成長は評価されにくいのである。

三役を1年半守り抜くというのは大変なことだ。だが、この状況の中で御嶽海は今場所まで三役で2桁勝利を挙げることは無かった。それどころか失速する印象の方が強かった。体力的な問題も有るのだろうが、間の悪いことに衰えが顕著な横綱大関に屈してしまうことが多く、「何か」が足りないという禅問答に辿り着いてしまうことになるのだ。

今場所の快進撃は、確かに内容も素晴らしい。だが、終盤でいつも失速する原因になってきた上位陣すら存在しないので、ケチは付けられてしまう。

消去法の優勝候補であることは不幸だと思う。時代に愛されながら、時代ゆえに過小評価を受けてきたことも事実だからだ。ただ、これは消去法の優勝候補という評価に甘んじてきた御嶽海自身の責任でもある。

消去法ではなく、自ら大関候補としての評価を勝ち取ることが出来ていれば、優勝争いのトップに立つことを何の躊躇いも無く祝福し、手に汗を握れていたのではないかと思う。

大卒力士への期待が一時期高まり、それが過剰な期待であることを知ってしまったこともまた、一つの不幸だったと思う。常幸龍や千代大龍、そして遠藤。昇進は早く、期待値も高かった。そして、それを煽るメディアの存在もあった。

御嶽海は時代に愛された力士だ。
しかし、時代ゆえに愛されにくい部分があることも事実だ。

残り3日。
消去法ではなく、心を掴む優勝を。

時代も、学歴も。
全てを超えろ。御嶽海。

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7月21日15時より阿佐ヶ谷「ろまんしゃ」で大相撲名古屋場所テレビ観戦会を開催します。
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