7連勝からの3連敗。御嶽海は健闘しているのか、不甲斐ないのか。

私は、ここがターニングポイントだと思っていた。
そして御嶽海は、正に壁に当たってしまった。

初日から7連勝。
そして優勝争いをする中で、3連敗。

優勝争いに初めて絡むということで、私は彼がどのような相撲を取るのか注目していた。要するに、自分の相撲が取れるのか。この一点だけだった。

プレッシャーの掛かる場面で結果を残せるのか。一気に行ける力士はそのまま大関になれる。だが、ここで躓くとかなり面倒なことになる。

日本の武道特有の、いや、日本のスポーツ全体でこの傾向があると思うのだが、結果が出なかった時に技術論ではなく、精神論に帰結するがために迷宮入りしやすいのだ。

強さを手に入れるために課題に取り組むのは全世界共通だが、その課題を人間性にまで見出していく。実力が足りない理由をつき詰めて、心の弱さに到達してしまう。

心の弱さなんてそう乗り越えられるものではない。躓いた後で再度挑戦し、少し上手くいかないことがあると、そこで精神面の未熟さに向き合う。自分に自信が持てなくなるので、プレッシャーの掛かる場面でまたミスをしてしまう。そしてその弱さを理由を精神面に求める。

私は御嶽海に、相反する想いを抱いている。

琴光喜以降で最高の大卒力士は、妙義龍だ。ここ数年で多くの大卒力士が大きな期待を受け、壁に当たり、怪我をして、本来の相撲が取れなくなった。最初の勢いで到達できる地位が、大卒力士の最高位であることがあまりにも多かった。

高校1年で高校タイトルを取った山口も、幕下10枚目格付け出しデビューの市原も、遠藤も、デビューからの連勝記録を作った常幸龍も、同じ軌道を辿った。

もう、大卒に求められるものがある程度分かるようになってしまった。同じキャリアの力士に対していつまでも同じように期待し、同じように裏切られるほど私は純粋ではなかった。常幸龍や遠藤の時ほどの沸き立つような期待を抱いているわけではないのは、そういう理由である。

だがこうした経緯を考えると、御嶽海は健闘している。一年間関脇を張り続けたのだ。既に妙義龍の全盛期と比肩するほどの実績を残しつつある。

本来であれば、頑張っていると捉えるところではないかと思う。そういう期待値の力士が優勝争いに食い込もうとして、力及ばず脱落する。まぁ仕方ないよね、で済む話だ。

私の想いは、違った。
不甲斐ないと思ったのだ。

大卒力士の中で健闘しているから不甲斐なさが許されるわけではない。現状で一番大関に近い位置に居る力士が、こんなところで足踏みをしては大相撲が困るのだ。

学歴とか、関係ない。
御嶽海に出来ることと現状にギャップを感じ、苛立っていたのである。
そう。
結局私は御嶽海を過小評価していたのだ。

阿武咲と貴景勝は強いが、もう少し時間が必要だ。その次の世代は貴源治まで飛んでしまう。更に次は湘南乃海だ。つまり、機が熟した力士は誰も居ないのである。

横綱の多くが危機を迎え、大関も陥落が相次いでいる。今がチャンスだ。逆に今を逃すと、先の力士たちが御嶽海を超えていくことだろう。

「ライバルは大卒」とか言っている場合ではない。3敗ならばまだ大丈夫だ。苦しい状況になりつつあるが、あと5日次第だ。

以前と同じ言葉で締めることになるが、お許しいただきたい
大卒を超えろ、御嶽海。

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7連勝からの3連敗。御嶽海は健闘しているのか、不甲斐ないのか。” に対して2件のコメントがあります。

  1. shin2 より:

    御嶽海は、とにかく「横綱になれる大関」を目指さなければいけない。
    たとえ貴源治や湘南乃海や、納谷や豊昇龍が上がってくるまでの中継ぎであってもだ。
    豪栄道や高安には悪いが、優勝争いに絡めない大関が何人いても場所は盛り上がらない。
    今場所、栃ノ心は左上手取ったら「モリモリと力が出るね」(北の富士氏談)だ。
    でも吊り上げられて、栃煌山に次ぐ「2代目シャケ」状態では困る。

    鶴竜戦は十三日目に組まれるか。横綱を倒して、まず2桁勝利を目指そう。

  2. 佐藤何号機? より:

    御嶽海は強い、が、どこが強いと言われると答えに窮します。
    速さ?平均以上だが阿武咲の方が上
    パワー?平均以上だが栃ノ心や逸ノ城の方が上
    うまさ?平均以上だが白鵬や鶴竜には遠く及ばない
    思いっきりの良さ?平均以上だが貴景勝の方が上
    考えてみてもここが強いという部分がない。
    この辺りは高安や豪栄道が上位に定着したころと似ている気がする。
    高安は立ち合いのぶちかましから体を利した攻めで大関に駆け上がった。豪栄道は右四つからの攻め+反射神経の良さで大関になった。では御嶽海は?
    言い方は悪いが御嶽海の相撲は才能のみで強くなるためにどう努力しているのかの形が見えない。
    同時期に上がってきた正代は双差しの形を求めすぎて現在埋没中なのでこだわる必要はないのかもしれない。
    だが、御嶽海には次を期待させる何かが見えないというのが私の感想です。
    今場所7連勝で変わったかと思ったが、左上手取られたらまずいという相手に連敗、いちかばちかの技を仕掛けてくる相手にまんまとはまり3連敗、正直な感想は「がっかり」しかない。
    特に逸ノ城戦は失望以外ありませんでした。
    御嶽海には大口叩く前に自分を磨いて欲しい。

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