「巨人、大鵬、卵焼き」に見る、昭和と平成の価値観の遷移と相撲人気の低下の相関関係とは?

大鵬が亡くなった。
優勝回数最多の32回を記録し、
戦後の高度経済成長期に圧倒的な人気と実力を誇った
伝説的な力士の逝去。
Wikipediaを見るだけでも功績の大きさについては
触れることが出来るので、この場では説明しないが
大鵬の凄さを語るのは、何といってもこのフレーズ。
「巨人、大鵬、卵焼き」
である。


当時子供に人気の有るものの3つの中に
堂々とランクインしているのだ。
このフレーズの凄いところは、
2013年でも当時を表す言葉として生きていることに有る。
流行語ということは誰もがその価値観を共有できている、
ということであり、つまりは一力士として
圧倒的な人気を誇ったということを示しているわけだ。
「巨人、裕ちゃん、卵焼き」でもなく、
「巨人、ひばり、卵焼き」でもなく、
「巨人、大鵬、卵焼き」なのだ。
そもそも子供に人気の有るものを3つ並べているのに
スポーツから2項目選ばれているという違和感。
当時の子供にとっては他にも魅力的なものが有ったはずなのに、
「巨人、大鵬、卵焼き」は誰もが共感するフレーズたり得た。
つまり、大鵬とはそれほどの存在だった。
相撲という競技そのものが多くの人の支持を集めていた時代であり、
その圧倒的な存在として君臨していたからこその人気。
相撲が強さの象徴であり、男らしさの象徴であり、
カッコよさの象徴だった時代である。
こうした価値基準が男性だけでなく女性にも支持されており、
大鵬の一番の時間は女湯から人が消える、
と言われたエピソードはそのことを雄弁に語っている。
大鵬が隆盛を極めた時代から数十年が経過し、
相撲は強さの象徴でも、男らしさの象徴でも、
カッコよさの象徴でもない時代が到来してしまった。
そもそも強さや男らしさへの憧憬という観念は
狭い世界の価値観になり、
男性の女性化に伴いカッコ良さとは一般的に
中性的な存在を指し示す言葉へと変貌した。
こうした価値観の遷移を経て、
多くの人が支持する対象から相撲は離れてしまったのだ。
大鵬がそれほどの存在だったというのは
時代が彼を支えていた、という側面が有ってこそであり
今の時代大鵬の人気を再現することは難しいことだろう。
だが、一相撲ファンとして思うのは
力士として圧倒的な存在の素晴らしさを
多くの人が共有できている時代が羨ましいということである。
強さや男らしさという観念は古臭いものかもしれない。
だがそこには男性として生まれてきた以上
敵わぬ存在であるために畏怖の念を抱かずにはいられない。
価値観の多様化は、今までに無い面白さを認めることに繋がったが
過去に認められてきた価値観が過小評価される、という
現象を生み出していることも事実である。
当時の大鵬の存在の大きさを思うと、
その良さが分かりづらくなっている現代の価値観は
寂しいことではあるのだが、仕方が無いこととも思う。
大鵬逝去のニュースは、私にとっては
偉大な人物を亡くした寂しさと時代の遷移という
二つの事実に向き合うことに繋がった。

「巨人、大鵬、卵焼き」に見る、昭和と平成の価値観の遷移と相撲人気の低下の相関関係とは?” に対して1件のコメントがあります。

  1. よっしぃ より:

    私がスポーツナビプラスのブログを始める際にペンネームを何にしようかと模索していた時にこの巨人 大鵬 卵焼きがしっくり来たので今に至っています。私は小学3年生の時から相撲を観ていて、1996年と2009年に出た明治以降の大相撲幕内力士名鑑や映像で見る国技大相撲のデアゴスティーニみたいなDVD付き全20巻を全て購入したくらい相撲が大好きです。恐らく大鵬が活躍した時は現在のように娯楽が少なかったのではないかと思われます。当時の大相撲は国民の関心事だった筈です。
    若貴がいた頃は俄好きも含め異常な人気でした。貴乃花が引退してからは完全に外国人力士に乗っ取られていることが嘆かわしく思えます。
    昔、テレビ朝日で放送されていた大相撲ダイジェストもよく観ていました。今はNHK で夜中の2時や3時台に25分の中継をしていますが、普段は仕事で本場所の中継はまず観られずませんし、少し長い相撲になっただけで頻りに割愛されます。
    あくまでも、個人的見解ですが、国会中継があるお陰で、5時からの放送は気に入りません。それまで観られなかった取組をビデオで映すのだから構わないでしょうと言わんばかりにあざとい感じに見受けられます。
    最後に日本人が強くないといけません。できれば20歳くらいまでの活きのいい力士の出現を望みたいです。

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