九重部屋の未成年飲酒報道に思う。日刊スポーツは至急事実究明を。

九重部屋の未成年の力士が巡業中に飲酒したことが発覚し、当該力士と九重親方が謹慎処分を受けるという事件が起きた。

日刊スポーツが報じたところによると、以下の通りだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/23c435cb1b6aa51647eb23a08e2222f5a4857c31

—————

同力士は秋巡業中の14日夜、成年の幕下以下の兄弟子、九重部屋に出入りする知人と名古屋市内の飲食店へ食事に出かけた。店と懇意にしている知人に酒を勧められたが、20歳未満であることから本人は断り、兄弟子も止めてくれていたという。しかし、店のおかみさんを含めた知人側から強く勧められ飲んでしまったという。

 その後、宿泊先ホテルの門限である午前0時をすぎたため、店を変えて飲酒を続けて朝方、当該力士と兄弟子はタクシーで愛知県大府市の巡業会場入り。タクシーを降りた際、具合が悪くなって兄弟子が救急車を呼び、病院に搬送された。

 病院で目を覚ますと、九重親方からしかられたものの、巡業から離脱することなく移動し、17日の岐阜県多治見市での巡業に参加。春日野巡業部長(元関脇栃乃和歌)からは前向きに励まされたが、その後、親方、兄弟子とともに東京に呼び戻され、19日に日本相撲協会で事情聴取を受けた。この時点で処分は伝えられず、対面した八角理事長(元横綱北勝海)からは「これから頑張ろう」と激励された。

 しかし、九重親方から事情を聴かれた際、心が折れるような言葉を言われ、ショックを受けたという。九重部屋に戻ると周囲から口を利いてもらえず、稽古中に親方からは、腕立て伏せの体勢で「そのまま30分以上いろ」と突き放された。師匠からは「1年間外出禁止」の処分を言い渡された。見捨てられたと受け止め、心が折れた。

 21日に部屋を飛び出し、実家に戻った。22日には、地元の理髪店でマゲを切った。23日には、部屋から荷物が実家に送られてきた。本人には知らされないまま、24日に協会から謹慎処分が発表された。

—————

この顛末を見ると、知人とおかみが拒否する未成年者に強制して酒を飲ませた、その影響で搬送された、しかし部屋の関係者は全員冷たく、親方に至っては叱責を受け、そんな角界に絶望したという読み取り方になる。

つまり、未成年力士には飲酒をしたという非はあるものの、避けられない状況であり、その後の仕打ちもひどいものだと受け止められる。実際この問題が発覚した時に知人とおかみに対する処分を求める声や九重親方を猛烈に責める声が大多数だった。

ただ、この記事はあくまでも未成年力士に近い関係者の主張から構成されたものだ。故に私自身「この話が事実であれば」というスタンスを示すより他なかった。

そんな中、事態の風向きが変わる一つの報道があった。

スポーツ報知の記事だ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/480dee42b0c42dc536fe898e37252e6acff57f9c/comments

—————

大相撲の秋巡業で九重部屋の20歳未満の力士が飲酒した問題で、幕下以下の当該力士含む2人が師匠の九重親方(元大関・千代大海)に了解を得ずに飲食店に行っていたことが26日、分かった。愛知・大府市での巡業(15日)の前夜、幕下以下の20歳未満の力士は成人力士とともに外出。翌朝の大府巡業で苦しそうに呼吸をしていたため緊急搬送され、飲酒が発覚した。その後、力士2人と同親方は謹慎処分を科された。

—————

大事なのは「幕下以下の当該力士含む2人が師匠の九重親方(元大関・千代大海)に了解を得ずに飲食店に行っていた」という点だ。

結局私もこの記事を見ても「これが事実なら」という枕詞を置かざるをえないところではあるが、未成年力士が無断外出をしていたとなると全ての前提が変わってしまう。繰り返しこの枕詞を使うことになるが、無断外出が事実なら果たして近い関係者の主張はどこまで正しいのか?と考えてしまうことになる。何故なら無断外出という自分の非を伏せる人間の主張だからだ。

「飲酒したことは悪いが、自分は被害者であって周りが酷くそれに耐えられなくなった」というのが大部分の方の受け止め方だと思う。実際私も「これが事実なら」そう思った。ただ、無断外出を伏せる人間の言うことをどこまで信じればいいか?と考えるとこの事件のキーとなる全ての前提を疑って掛からねばならないことになる。

酒を勧められたが断ったのは本当だろうか?急性アルコール中毒ではなく二日酔いだったのでは?心が折れる言葉は単なる注意だったのでは?

そして行動の中には責められないものも出てくる。無断外出して酒飲んで倒れた力士は腫物なので口は聞きづらいし、親方の厳しい態度も全てを肯定できないが封建的な角界であれば分からなくもない。

更には、報道通りであっても疑問のある行動も見えてくる。強制されて酒飲むような状況で2軒目まで行くだろうか?朝まで強制されて飲み続けるのは本人も問題ではないだろうか?

結局ここで問題なのはどこに事実があるか分からないところだ。大筋で見えているのは未成年力士が酒を飲み、巡業前に体調を崩し、親方に叱責され、髷を切ったという部分だけであって、事実ではないところがあるかもしれないと疑って掛からざるを得ない。

今はまだ日刊スポーツの報道、近い関係者の主張が全て正しいという線がなくなったわけではない。スポーツ報知の言うところの「無断外出だった」という点が確定しているという訳ではないからだ。

ただ、事実が分からない以上、これだけ大きな問題が報じられたにもかかわらず読者としては気持ちのやり場もなければ事件に対する見方が全く定まらないままヤキモキせざるを得ないという状況が続くことになる。

だから、元々の主張に異を唱えられた日刊スポーツには今一度事実関係を洗い直してもらわねばならないと私は思う。まずは今回の顛末の重要なカギを握ることになる「無断外出」が正しいか?という点だ。

この点を明らかにするとともに大事なのは「近い関係者」が明かした内容が事実なのか、知人と店のおかみ、九重部屋の弟子ならびに九重親方にヒヤリングする必要がある。

一度報道されたことについて事実関係に疑問を呈され、そのまま真相が藪の中ということは少なからずある。ただ、正直なところ日刊スポーツはこの件をどのように裁くかという点が本当に大事だと思う。

何故なら、仮に無断外出が事実であれば最も損をしているのは九重親方だからだ。

九重親方や九重部屋の名誉を回復し、正しい事実を読者に届けるためにも私は日刊スポーツのスタンスを注視したい。逆に言えばこのまま何も動きが無ければ私の中で日刊スポーツの信頼は地に落ちると思う。それくらい重要なことだ。

今の段階で私は日刊スポーツが報じるニュースの全てを「これが事実なら」と距離を置かざるを得ない。読者が報道を事実として受け止められないというのは本当に問題だ。報道された情報がそのスタンスなら、SNSで蔓延る情報と同じレベルになってしまう。

かつて東京スポーツが「日付以外は全部ウソ」とビートたけしにギャグで言われていたことがあるが、日刊スポーツがそのレベルになってしまうというのは笑えないジョークだ。

勿論読み手にリテラシーは必要だ。バイアスの掛かった記事は多く存在するし、事実関係が明らかになっていない状況で情報が出てくることもある。だから情報が出そろうまでは強い言葉を出さずに常に見定める姿勢が大事になる。

だから、今回のことは読者にとっても良い教訓にはなったと思う。報道をうのみにせず、書かれたことを自分の頭で見定めることこそが大事なのだ。

とりあえず今は、日刊スポーツの動向を注視したい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)