服部桜(勝南桜)引退後に、序ノ口離れした皆様へ。「名誉ある最弱力士」たちをもう一度観ましょう。
最近序ノ口を見ていない。
そんなことに気づきました。
じゃあ、これまでに序ノ口を観ていたか?というと、チラ見はしていたんですよ。それもね、ネット配信で朝からずーっと観られるようになったからだったんですよ。
Ustream辺りからBSの幕下以外の時間帯も観られるようになって、国技館行かないと観られなかった三段目以前の相撲が観られる。そういう非日常な感じが良くて、ガッツリは見ないけど思い出したようにチラ見して。まぁ、チラ見なんですけどね。
相撲にレベルを求めたとしたら、序ノ口を技術や攻防という意味で楽しめはしないですから。だったら上位を観ればいいってことですからね。
ただ。
ただ、なんですよ。
序ノ口からネットで観られるようになったタイミングって、本当に奇跡的だと思うんですね。
それは、服部桜という不世出の力士の登場と重なったからなんです。
もう引退してから2年以上経つので、下手すると服部桜のことを知らない方すら現れているかもしれません。ネットで調べればわかりますが、服部桜は3勝238敗という前代未聞、前人未到の記録を残した力士です。
恐らく彼のことを世界で一番熱烈に観ていたファンの方でさえ「服部は心技体全てにおいて弱い」という名言を残されている、そんな相撲を取っていました。ですから、服部桜が現役の頃は序ノ口を観れば、BSや地上波とも異なる異世界が堪能できたわけです。
服部桜の存在って、否定の割合が限りなく高い賛否両論という状況だったと思います。私自身、あそこまで強くなれない力士をプロの土俵に上げるという行為に対して疑問は少なからずありました。
あの相撲はどうなんだ?
どうなんだ?の裏にある言葉は「俺は力士として認めない」っていうワードです。
それは個人の考えの違いで、今現状の精度では服部桜も存在可能なわけですから、これは好き嫌いということで語られるべき話ではあると思っています。
さておき。
とはいえ、とはいえですよ。
そんな服部桜の相撲に関しては、完全に異質なんです。
だから、やっぱりとんでもないのですよ。服部桜の相撲ってやつは。好き嫌いを超越したすげえものだったんです。強いとかすごいとか、それでは語れない珍品なんですよ。
絶対に他では観られない。だから、認めない想いはあるんですけど、無料で放送していたらなんか見ちゃう時も出てくる。
そして、よく考えてほしいんですけど、服部桜って3勝しているんですよ。つまりね、接戦になることがある。
何が言いたいかって、実力的に近い力士、つまり、相撲が全然な力士もいる。その闘いっていうのもまた、別の味わいがあるんです。
故に見てしまう。
だから、あの頃の序ノ口っていうのは百花繚乱とも言える状況だったと思うんです。今にして振り返ると、ですよ。
本来序ノ口っていうのは楽しむものではなかったけど、服部桜という楽しみ方が出来たっていうことなんだと思うんですね。そりゃ、服部桜が引退したら離れますよ。序ノ口の新しい楽しみ方の中心に居た力士ですからね。
服部桜は単に完成度が低い訳ではない、異質の相撲でした。そして服部桜を取り巻く他の力士達が居て、その力士達との対戦することによって予想も出来ない相撲が展開された。
そもそも服部桜のような力士っていうのはこれまでも居たのかもしれないですけど、映像が残っていないし、普通だったら辞めていきます。だから、存在を知られないまま終わっていったんだと思うんです。
服部桜は結局およそ6年現役を続けました。そして映像を多くの方が目撃しています。それが特別だったんですよ。
服部桜が居たからこそ異質な序ノ口という世界が更に際立った。
本当に奇跡のような時間だったんです。服部桜が居なくなっては成立しない空間が、あの6年にはあった。
だから、今序ノ口を観ても当時のような思いはわかないし、序ノ口の力士が序ノ口の相撲を取っているというシンプルなものになっています。
ただ、残り香のようなものはあると思います。何故なら、当時服部桜と対戦したベテランたちは健在ですから。
番付は上がらない。でも相撲の世界に居続ける。この状況で現役続けるっていうのは純粋な動機だと思うんです。だからこそ、私の界隈では彼らのことを「名誉ある最弱力士」という言葉で表現している人も居ます。なるほどと思います。
ですから、残された「名誉ある最弱力士」の生きざまを、この九州場所のどこかで私は観てみようと思います。
あの頃服部桜を観ていた皆さま、一度序ノ口に戻ってみてはいかがでしょうか。
イベント情報
①11月25日 17:00
大相撲メタバース場所
メタバース空間で大相撲14日目の幕内後半の取組をパブリックビューイングします。3回目のイベントですが、メタバースきっかけで普段相撲を見ない方に大相撲が届いてきていてビックリしています。
大相撲メタバース場所の会場はこちら。
https://cluster.mu/e/84e32ca6-3fab-4276-b5a5-47c97991f531
メタバースだとちょっと・・という方にはVoicyとYouTubeでも配信を行いますので、後日案内いたします。
②12月16日 18:00
大相撲トークライブ
(錦糸町すみだ産業会館)
データで振り返る2023年の大相撲を横尾さんと行います。今回のゲストはなかなか面白いですよ。え!?そんな話聞けるの?って方をお呼びしています。
予約サイトはこちら: