あの全日本相撲選手権から20年。吐合の同期はどうなったか調べてみた
Contents
私が相撲を観始めたきっかけは吐合
私が相撲をこのような熱量で見始めたきっかけは、何度もお話ししているように吐合(はきあい)という力士がきっかけでした。
そしてきっかけのきっかけになったのが忘れもしない、2004年の全日本相撲選手権だったんです。
このあたりのエピソードについては2021年発売「スポーツとしての相撲論」(光文社)の最後のチャプターに掲載しているのでご覧いただきたいところです。
ざっくりと言うと澤井という怪物のような力士が高校生にして全日本を制してしまうかもしれないという話を父が熱っぽくしていたんです。
この伏線にあったのが、過去に1名だけ高校生で全日本を制した久島という力士が居まして、確か小学校の頃に「久島はデビューから2年で大関になる」と予告してそのメモを冷蔵庫に貼っていたんです。
まぁ結果はご存じの通りなんですけどね。
あの久島以来の怪物力士が相撲の歴史になるかもしれない。
子供の頃に父が大風呂敷を広げて散々な結果になった久島の残像はあるんですけど、でも60近い父があの頃のように興奮気味に観ている訳ですから、当時はそれほど相撲を観ていなかったんですけど乗っかりましてね。
で。
準々決勝に出てきた対戦相手が吐合だった、という訳です。
まぁびっくりしますよね、
この名前ですから。
学生横綱と高校横綱の対戦は澤井の圧勝だったこともあって、西尾家の話題は吐合がすべて持って行ったんです。
あの変な名前の奴はこの後大丈夫なんだろうか?
と。
吐合と同期はどこまで出世したのだろう
とまぁ、本来だったら力士をネタにした「コサキンソング」とか「うさんくさポップス」みたいなカテゴリの話として私は吐合をネタ的に追いかけて、そこで知った16時以降のロジックが全く通用しない相撲、当時はそんな言葉は無かったのですが勝手に「幕下相撲」と命名してあなたの知らない相撲の世界がある、っていう切り口でブログをスタートしました。
まぁそれを続けていたら、ブログ開設から半年で吐合があと1勝すれば十両ってところまで快進撃を見せたんです。
当初はギャグで始まった私の相撲記は一気にシリアスになって、これもよくたとえ話にするのですがその転向ぶりがジャンプ漫画の「ジャングルの王者ターちゃん」とか「マキバオー」みたいな振れ幅だったわけです。
で。
私気づいたんですよ。
もうあれから20年経つんです。
まさかあそこで見た変な名前の力士がきっかけで本2冊出したりワイドショーに何度か出演したりするなんて考えていなくて、私の人生はあの瞬間に妙な方向に向かい始めたわけなんです。
ただ。
人生があの時点でスタートしたのは当然、吐合自身も同じだったんです。
吐合は最高位が幕下2枚目でしたが、当時は100人以上の同期達が居ました。あれから20年が経過して、吐合の同期達は果たしてどうなったのか。
・・・
なんて面倒くさい企画を思いついてしまったのだろう。
これは調べるのが相当面倒だ。
だけど、思いついてしまったものは仕方がないので、データをいじってみました。
最高位三段目まででおよそ70%
まず、番付に名前が載った2005年デビュー力士ですが、実に113人居ました。
2023年で50人台ですから、もうここ最近の倍近い人数ってことになります。
当時のことが羨ましいような、でもまぁ、今が沈んでいるだけという見方をすべきなのか、ここは角度の違いで感想が別れるところです。
で、
その112人がその後どうなったのか。
まずは最高位序ノ口ですが、22人居ました。
この力士たち、ほとんどが1~2場所しか出場していません。
興味深いのは番付には載っていても、出場せずに辞めている力士すら結構居ましてね、まぁもうこの22人というのは元力士として殆ど人の記憶に残っていないレベルではないかと思います。
これが最高位序二段になると、29名居ました。
驚きなのが、序ノ口序二段だけでもう既に50人オーバーしているんですよ。
つまり、2005年デビュー組単体で見ても、三段目以上に成っていれば優秀な部類に入ってくるということです。
まぁそれだけ当時って入門者が多くて、序二段すらなかなか超えられなかったということなのかもしれないですけど、序二段で停滞したら次の道を模索するってくらいの地位だったのかもしれないです。
序二段の上位が最高位になると現役も5年~10年という力士が増えてきます。
今は最高位が序二段でも現役を長く続けている力士が結構多いですから、当時とは結構状況が変わってきているんじゃないかと思います。
そして最高位三段目ですが、22名居ました。
三段目くらいまでなら結構多いのかと思いましたが、想像以上に少ない印象です。となると幕下以上が案外多いことになりますからね。
ただ不思議なのが、2011年くらいから大相撲を熱心に観ているはずなんですけど、四股名を見ても誰もピンと来なくて。
確かに当時の私って幕下を中心に観ていましたけど、芋づる式に三段目の力士も知っていったところがありまして、その割にほぼ全員誰それ?状態だったんですよね。
となると当時私が知っていった力士たちって案外最高位が幕下以上ってことになる・・・のかな。
最高位幕下は印象に残る力士が目白押し
ということで、幕下です。
最高位幕下が意外に多くて、26人居ました。
三段目くらいまで行く力士は現役を続けて一度は幕下までは行くということなんですかね。
本来力士になれば幕下くらいまでは1度くらいは行ける可能性はあるけど、とはいえ幕下まで行っても協会に残れる訳ではないので、限界まで挑む前に辞めるのが三段目と言うことなのかもしれないです。
ここまで来るともう、親しみのある名前が多いです。
中継でよく見た名前が目白押しです。
え?この力士って吐合と同期だったのかと驚く力士も居ますが、勝ち越せば関取というところまで番付を伸ばした力士が吐合と同期だけでも4人も居ます。
この人たちで座談会開いたら面白そうだなぁと思いつつ、切ないことに前田はもう亡くなっているんです。
あの身体でしたからね。
現役最後の方は動かない方が攻めあぐねてくれていましたが、前田は力士としての矜持があったので攻めに行っちゃって。
で、バランスを崩してバッタリと落ちてしまう。
割り切って攻めない方が勝てそうだったのですが。
そういうところまで相撲を取り切った力士たちが居るのが最高位幕下なんですよ。吐合自身最後は幕下60枚目でしたからね。
ここまで取り切れば相撲への未練も絶てますから、幕下上位だった力士がセカンドキャリアで成功しやすいというのはなんかわかる気がしますね。
そういうメンバーが集まっていますよ。
ということで、吐合は同期の中では113人中13位タイという結果でした。
幕下15枚目格付け出しデビューの力士としてはもっと出来たと思わずには居られませんが、ケガで番付外まで落ちた力士がその後這い上がってキャリアハイを経験したということを考えると本当によく頑張ったんですよ。今更ですけどね。
2005年世代は優秀だったのだろうか
ということで、関取経験者です。
こう見ると多いですね。
多いうえに関取どころか親方経験者が8人も居ます。
これ凄そうです。
旭日松のように既に退職している人も居ますが、とはいえこれだけ多くの力士たちが105人の中に含まれているのですから層がかなり厚い世代なのかもしれないです。
いわゆる「ろくいち世代」が高校卒業のタイミングと重なっていますし、大関2人と関脇が2人っていうのは多分なかなか出来ないことだと思うんですね。
・・・
仕方がないので前後1年の元関取も調べますかね
2003年デビュー
将司(前8)、城ノ龍(十両1)、佐田の富士(前2)、富士東(前4)、佐田の海(前筆頭)、魁(十両筆頭)、鏡桜(前9)、徳瀬川(前筆頭)、蒼国来(前2)
2004年デビュー
嘉風(関脇)、玉鷲(関脇)、白乃波(十両4)、里山(前12)、木村山(前7)、豊真将(小結)、出羽鳳(十両10)、磋牙司(前9)、出羽疾風(十両9)、益荒海(十両5)把瑠都(大関)、高見藤(十両13)、大岩戸(前16)
2006年デビュー
臥牙丸(小結)、竜電(小結)、錦木(小結)、栃ノ心(大関)、栃飛龍(十両7)、松鳳山(小結)、境澤(前15)、政風(十両12)、千代の国(前筆頭)、舛ノ山(前4)、魁聖(関脇)
2007年デビュー
栃乃若(前筆頭)、山本山(前9)、天鎧鵬(前8)、阿覧(関脇)、清瀬海(前13)、大翔湖(十両10)、千代嵐(十両10)、彩(十両11)、土佐豊(前頭筆頭)、徳真鵬(十両6)、丹蔵(十両6)、朝弁慶(十両7)、天風(前13)、琴恵光(前4)、旭秀鵬(前4)、千代丸(前5)
こう見ると毎年10人前後は関取経験者を輩出しているということが分かります。
2005年デビュー組に関して言うと、人数が多いというよりは傑出した力士を多く輩出した世代ということが言えますから。
人数で言えば2007年が16人と際立って多いですからね。
でもこの世代との比較だと、十両経験が短い力士やピークが比較的短くて幕下以下を務める期間が長い力士が多いというのが2007年世代の特徴で。
多分これは、2011年に引退が続出したことも影響しています。となると、時代的な入れ替えが重なるか?ということにも左右されるんだと思うんですよ。
吐合の世代の力士たちがどうなったか?
という観点で調べ始めましたが、なんか思わぬ方向に話が進みました。
なお、2005年世代については現役力士が3人(高安、奄美岳、勝誠)居ます。
奄美岳に関しては北の湖部屋から山響部屋に移った吐合の同僚で同期なんですよね。
ちなみに奄美岳は2025年初場所で2007年以来序ノ口で相撲を取ることになります。
本当に生き方は人それぞれで、この経験が今は勿論、セカンドキャリアでも活かせたら相撲ファンとしてこれ以上嬉しいことはないと思うんです。