北播磨の偉業、成らず。相撲は勝者と敗者が居る。

Contents

37歳の北播磨が、以前とは異なる相撲で6連勝

北の湖/山響部屋。

幕下11枚目。

6連勝。

あと1勝で十両昇進。

ここまで書けば誰のことかお分かりいただけるだろうか。

そう。

北播磨のことだ。

37歳という大ベテランが、先場所の三段目優勝から更に勢いに乗って幕下をも制する勢いだ。

ホープの朝白龍と羽出山、関取経験のある実力者:白鷹山と矢後、上位経験の豊富な出羽ノ龍、苦労を重ねて幕下中位で闘っている鳴滝といった、バラエティ豊かな面々を全て倒してのことだ。

私が観た限りでは基本的に北播磨のペースで、電車道ではないが残されたところからでも再点火して攻め勝つという内容で、全盛期とは異なるが今の北播磨の強い相撲と言えるものだと思う。

かつての相撲ではない。

関取時代であれば付け入るスキなく爆発的な立ち合いで持って行って倒している。それが北播磨だった。

しかし、これが37歳の北播磨と言える内容には感じずにはいられない。

齢を重ねた北播磨がかつての相撲を取れないことから辿り着いた新境地で結果を残しているのだから。

吐合は今回の北播磨とほぼ同じ状況で、夢が叶わなかった

そして、話は冒頭に戻る。

まだ私が「幕下相撲の知られざる世界」というブログを書き始めていた頃のことを思い出してほしい。

そして、もう一度この条件を思い返してほしい。

北の湖/山響部屋。

幕下11枚目。

6連勝。

あと1勝で十両昇進。

実は、正に同じ条件で最後の一番に臨んだ一人の幕下力士が居た。

もう12年近く前のことになるので、その後大相撲を観るようになったファンの方は知らないと思う。

吐合明文。

私が相撲に興味を持ち、最初は珍名に半笑いだったが、膝の大けがで幕下付け出しデビューから番付外という地獄を味わい、幕下で一進一退の闘いを見せ、29歳の2012年初場所に幕下11枚目から6連勝してあの日を迎えた。

実は同部屋の北播磨は、十両13枚目という立場であの取組を土俵下で観ていた。

ご存じの方も居るかもしれないが、吐合は1分を超える大熱戦の末、里山に敗れた。親方ちゃんねるでもあの取組は名勝負として語られている。幕下の取組としては異例のことだ。それほど痺れる一番だった。

吐合里山の一戦はこちら

https://youtu.be/ucpT_1NobaE?si=7NoTBVIoiNMULfCl#t=14m11s

まさかあの時とほぼ同じ条件が整い、当時は関取だった北播磨がラストチャンスかもしれない一番に臨むとは。NHKでは吐合が敗れた瞬間に我が事のように残念がる姿が抜かれていた。取組前の力士の表情としてはほぼ観ることが無いものだったと思う。

その後吐合は十両に昇進することなく、2015年に引退した。

その8年後に、北播磨は全てを賭けて聖富士と闘う。手に汗握るとはこのことだ。幕下に興味を持ち、相撲を観るようになり、そして相撲ライターになった一人の男はこの数奇な縁を正に自分のこととして捉えずには居られなかった。

素早く攻める北播磨。しかし崩れない聖富士

幕下上位五番での出場なので、取組までに時間がかかるのが何とも怖い。

だが、十両土俵入りが終わると幕下の進行は早い。

先ほどまであれほど「早く見たい」と思っていたのに、気が付いたら時間だ。待ったなしの声がもう掛かるのかと驚く。

毎度のことだが、これが幕下だ。

まだまだ大きくなりそうな聖富士と、細くなりつつある体の北播磨。

そのコントラストが本当に対照的だ。

立ち合いは北播磨がやや優勢。攻め立てに掛かるが、聖富士は動かない。素早い動きで崩しに掛かるが、なかなか厳しい。

聖富士の反撃に遭う。抵抗できない北播磨。

あっさりとした決着だった。

勝者が居れば敗者も居る

19歳の聖富士は強かった。

これから更に強くなることだろう。

12年前に連勝中の吐合が千代鳳と対戦したことを思い出した。

恐らく人生最高の出来だった吐合が、怖いものなしの千代鳳を牛耳り、何もさせずに勝利したあの美しい相撲を。

吐合がこれ以上ない相撲を取り後の三役を破ったが、力のある力士が力量通り相撲を取るとそう簡単には勝てない。

北播磨の物語の美しい着地点を期待していたが、聖富士にも物語はある。

そうだ。

そのことを12年前に私は知ったからこそ、こんなに相撲を好きでいられているのだ。

勝者が居れば、敗者が居る。

そんな単純なことを一人の力士に肩入れしているとつい忘れてしまうが、等しく十両を目指しているからこそ幕下は白熱する。

北播磨には来場所がある。

そして、再来場所もある。

今場所これだけ出来たのだ。幕下上位での活躍を期待したい。次こそは、美しい物語が完結するところも観たいのだ。

残酷なコントラストを見ると、そう思わずには居られない。

イベント情報

①11月25日 17:00
大相撲メタバース場所

メタバース空間で大相撲14日目の幕内後半の取組をパブリックビューイングします。3回目のイベントですが、メタバースきっかけで普段相撲を見ない方に大相撲が届いてきていてビックリしています。

大相撲メタバース場所の会場はこちら。

https://cluster.mu/e/84e32ca6-3fab-4276-b5a5-47c97991f531

メタバースだとちょっと・・という方にはVoicyとYouTubeでも配信を行いますので、後日案内いたします。

②12月16日 18:00
大相撲トークライブ
(錦糸町すみだ産業会館)

データで振り返る2023年の大相撲を横尾さんと行います。今回のゲストはなかなか面白いですよ。え!?そんな話聞けるの?って方をお呼びしています。

予約サイトはこちら:

https://peatix.com/event/3746127

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)