2023年九州場所13日目所感 良さを打ち消す2敗の二人の強さ
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高安を苦にしなかった熱海富士
熱海富士は高安という難敵を相手にどうするか。
かち上げと左四つという、自分の形で気持ちよく取られると超人化する高安を相手に熱海富士がどう立ち回るかがポイントだと考えていた。
素早く攻めて形を出させないのか。
高安にある程度やられたとしたらどうするのか。
そんなことを考えていたが、かち上げはある程度ヒットした。そして高安が熱海富士を止めて、左をねじ込もうと動き続けた。
が、熱海富士が入れさせないように立ち回る。これが実に上手かった。力で拒むのではなく、動きで止める。
高安の体が立ってきたところで態勢を入れ替えて反撃。土俵際だったのでここからは早かった。
実に見事な勝利。
ここまで上手く立ち回ると、高安をあまり苦にしていないのではないかと感じるほどだ。
遂に大栄翔に押しこまれなくなった霧島
そして霧島は大栄翔との対戦。
大栄翔には勝負所で勝ち続けていることもあり、自信を持っているのかもしれない。
大栄翔は押しこめるのだが、どうにも決め切れないという取組が続いている。
立ち合いは大栄翔だが、霧島は下がらない。
これは今までとは異なる流れだ。
思ったように攻められなかったせいか、大栄翔は前への圧力を強めたところで滑って勝負あり。
遂に霧島はこの体格で大栄翔の攻めを苦にしなくなってしまった。
明確に力の差が付き、前に出ることによって威力を弱める術を知ったということなのかもしれない。
何でも出来る霧島を相手に熱海富士はどんな選択を取るのか
優勝争いトップの二人の共通点は、相手の良さを打ち消すことだったように思う。
高安と大栄翔という、自分の形を出させてしまうと大変危険な相手に対して大関と新鋭が形は違えどそのことに成功したのは興味深かった。
特に熱海富士に関しては、21歳だとしたら普通は自分の良さをぶつけるような相撲を見せに行くものだと思うが、無欲ではなく戦略的に高安を抑えた。
これが霧島のような力士が取るのであれば分かるが、これを熱海富士がやってくる。相手の目線で見れば対策の対策が必要になってくるということだ。
自分の相撲も取れるし、対策を取ったうえでの相撲も取れる。
そして、14日目にはそんな二人が対戦する。
本来ならば熱海富士がまっすぐぶつかってくるところを霧島が捌くという展開なのだろうが、この流れだと霧島が上手く立ち回る展開になる。
だとすると、熱海富士はどんな相撲を取るのか。
先場所の優勝決定戦では変化を受けて敗れた熱海富士が今場所のクライマックスとも言える場面で、進化した姿を見せたいところだ。
霧島には変化は無い。しかし、何でも出来る。
ある意味一番難しい相手かもしれないが、想像しがいのある本当に面白い取組になったと思う。
そのほかの見どころ
3敗の一山本と琴ノ若は4敗となり、霧島熱海富士の直接対決が組まれた時点で優勝は消滅した。
一山本は立ち合いで突っ込み過ぎた感もあり、変化を受けて敗れた。
琴ノ若は竜電に頭を付けられたことによって腰が伸び、堅牢だったはずの守りに綻びが生じた。
優勝争いを数名で行う時には誰かが必ずこうしてパフォーマンスが落ちることがある。
これが重圧なのか、疲れなのか、両方なのかは分からない。ただ、特に琴ノ若には期待していた分だけこの2日で見せた弱点が残念だ。来場所以降はこの弱点を突かれることが予想されるので、これからは大変だろう。
二人にはこの経験をよい糧にしてほしいが…どうなるだろうか。
それにしても貴景勝は4敗になってから相撲が変わらない。
朝乃山戦から前に出る圧力と崩しのバランスが非常によく取れていて、相手のことが見えている。
コンディションがいいとは言えない中で、上位を相手に勝ててしまう。綱取りは今日で完全に終了したが、消化試合かもしれないが、貴景勝からもまだ目が離せない。悪いけど、良い。そういう相撲だと思う。
イベント情報
①11月25日 17:00
大相撲メタバース場所
メタバース空間で大相撲14日目の幕内後半の取組をパブリックビューイングします。3回目のイベントですが、メタバースきっかけで普段相撲を見ない方に大相撲が届いてきていてビックリしています。
大相撲メタバース場所の会場はこちら。
https://cluster.mu/e/84e32ca6-3fab-4276-b5a5-47c97991f531
メタバースだとちょっと・・という方にはVoicyとYouTubeでも配信を行いますので、後日案内いたします。
②12月16日 18:00
大相撲トークライブ
(錦糸町すみだ産業会館)
データで振り返る2023年の大相撲を横尾さんと行います。今回のゲストはなかなか面白いですよ。え!?そんな話聞けるの?って方をお呼びしています。
予約サイトはこちら: