大相撲初場所4日目所感 幕内上位に居た若隆景や伯桜鵬でも幕下で勝ち続けるのは簡単ではない
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実績ある力士が幕下で相撲を取らなかった頃もあった
実績ある力士が幕下以下に落ちるほどの大きな怪我、そして長い休場というのは子供の頃はあまり記憶にありません。
というのも、当時は実績ある力士は十両や幕下に落ちると引退という決断をしていることが多かったからです。
子供の頃に異色だったのは栃赤城の存在でした。
どうもスポーツニッポンの「幕下の結果」で勝敗だけ書いてある力士は元々三役だったらしいということは、確か両親に教わって知ったように思います。
NHKの中継でも幕下上位15枚目までは勝敗を教えてくれるので、ここで見慣れぬ名前と成績を観るのが好きでしたが、幕下まで落ちているのに何故現役なのだろうと思っていました。
幕下とは、当時の認識ではそういう地位だったのです。
基本的に知っている力士の居ない地位であり、ここから上がってくることで一人前になる地位でした。
幕内上位と幕下が相撲を取ったらどうなるのか
時代は変わり、私が「幕下相撲の知られざる世界」を書き始めた位のタイミングで実績ある力士も幕下に落ちても相撲を取るようになりました。
元関取というのは幕下の大きな一角を占めるようになったように思います。確か幕下の30人以上が元関取という場所もあったはずです。
ですから、純粋に気になっていたのが「幕内上位の力士が幕下力士と対戦したらどうなるか?」ということでした。
力を落とした実績ある力士ではなく、バリバリの力士が力を発揮したら一瞬で決着が付くのだろうか?
そんな疑問に答えたのは栃ノ心でした。
大きく番付を落としたタイミングで幕下で14連勝。
これほど違うのかと驚かされました。
とにかく栃ノ心はあの時強かった。こんな怪物に勝てるわけがない。これが幕内上位の力士の実力なんだ。そう思いました。
ただ、その認識に誤りがあったことを、その後知ることになります。
幕内上位だった力士が怪我で幕下に落ちると全部は勝てない
大関だった照ノ富士が、ボロボロになって序二段に落ちた後、序二段は全勝でしたがその後は三場所連続で1敗しています。
さすがにあれだけボロボロだったから照ノ富士は仕方ない。
幕下10枚目まで戻ってきた場所では全勝でしたし、コンディションが整わないと流石に負けることもある。それくらいの認識でした。
ただ、朝乃山を見て考えを改めました。
朝乃山に関してはご存じの通り三段目に地位を落としましたが、深刻な怪我が理由ではありませんでした。
つまり、栃ノ心や照ノ富士よりも勝負が出来る、大関の実力を持った力士が三段目や幕下で相撲を取るという状況だったんです。
しかし、7回相撲を取るとどこかでやらかすこともあれば、相手に良い相撲を取られることもある。
結局朝乃山は幕下に2場所いましたが、2場所とも6勝1敗だったんですよね。
朝乃山の勝負弱さに起因するところもあるかと思いましたが、だとしても勝つまでに至ってしまうのが相撲なのだと感じました。
余談ですが、朝乃山に勝った2人は勇磨と玉正鳳で、どちらも関取になっているのはちょっといい話だと思います。
若隆景も伯桜鵬もすんなりとは勝たせてもらえない
今場所は大関候補だった若隆景と、10代で幕内優勝に手がかかった伯桜鵬という二人が幕下で相撲を取っています。
どちらも大きな怪我からの復帰ということもありますが、彼らであればどうなのだろうという期待と不安がありました。
若隆景は先場所2敗しています。嘉陽に敗れた最初の相撲を観た時にこれが若隆景なのかと驚きましたが、以降は若隆景の相撲も随所に見せてくれました。
ここまで二人はらしさを見せ、良い取組を見せています。
ただ、実績や潜在能力を考えると「もっと出来ないものなのか」と考えるところがあることも事実です。
特に伯桜鵬については2番取っていますが、いずれも長期戦になっており、これを上手さで制するという内容でした。
今日の相撲も確実に勝つために時間を使ったものだとは思いますが、時間をかけて闘う様には「これは苦戦しているのではないか?」と思ったことも事実です。
当たりの強さやスピードで圧倒するような内容になることを期待して見ておりましたが、そこまでコンディションが戻ってきていないこと、そして幕下上位はそれを許さない地位だということがよく分かります。
幕下は優勝すれば15枚目以内であれば1場所で関取に復帰出来ますが、1敗するとジャンプアップは出来るものの元居た地位に戻るには足踏みをする結果となります。
そう考えると実績ある力士であっても幕下や三段目まで地位を落とすほど休場が続くと「全勝したら」という過程で上位復帰の見込みを作れるものではないのです。
私がブログを書いていた頃とは異なる味わいの幕下の厳しさを目の当たりにし、14時半の相撲が更に面白くなってきたと感じたのでした。