2023年九州場所14日目所感 熱海富士にもさせなかった霧島の真骨頂
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期待以上の活躍を見せる熱海富士
ここまで2敗の熱海富士と霧島。
熱海富士が先場所に優勝決定戦で貴景勝から変化を受けて敗れ、新鋭力士が真っ向から挑んだのに対してそれを受け止めなかったということもあり、その期待と人気は高まり続けた。
同じように優勝を逃した琴勝峰と比べても、ここまで熱海富士はポジティブに受け入れられるのかと驚かされた。
ただ、この期待は果たして適正なものなのか疑問なところはあった。それは阿炎や高安には勝利していたが、上位力士を相手に相撲を取らせてもらえなかったからだ。
そういう意味で私は高まる人気に少し距離を置いていたが、今場所は更に相撲が冴え渡ったことに驚きを隠せなかった。
優勝争いをリードし、豊昇龍を逆転で破り、高安の良さを打ち消して勝利した。自分の相撲を取る以外にも良さが出て、期待に応える姿に逞しさを見た。
今日はそんな熱海富士の今場所の挑戦の総決算となるのがこの霧島戦だ。
相手の良さを打ち消し、次第に自分の形を作るのが上手いのが霧島だが、今日はどのような熱海富士が出るのか。注目の対戦だ。
立ち合いで突っかけ、立ち遅れた熱海富士
熱海富士としては自分の呼吸で、間合いで当たりたい。
霧島に良さを潰されないうちに、自分の良さをドンドンぶつけていきたい。
そんな想いが現れたのだろうか。
熱海富士が立ち合いでつっかける形になってしまった。
こうなると熱海富士としてはギリギリのタイミングで行きづらくなる。これは霧島が意図したのかは分からないが、結果的に熱海富士に最高の当たりを許さない大きな理由となった。
やや立ち遅れた熱海富士に右を差し、左で攻め続けてもろ差しの形を作り、抵抗するスキを消してそのまま勝利。
立ち合いで勝った霧島の、隙の無い相撲だった。
熱海富士にもさせなかった霧島
今日の霧島は老獪というか、熱海富士にさせない相撲だった。
思えば今場所の霧島はそういう相撲が多い。
琴ノ若にも、大栄翔にも、そして熱海富士に対しても同じことが言える。豊昇龍や貴景勝とは異なる、霧島の持ち味だ。
霧島は何でも出来るというのは私の周りでよく聞く言葉だが、守りの固い琴ノ若には頭を付けて攻略し、大栄翔には素早い立ち合いで突き押しの威力を目減りさせ、熱海富士には立ち合いで勝ることで優位に進めた。
決して体が大きいわけではないし、抜群のスピードがある訳でもない。すごい力があるという話は聞くが、どの難敵に対しても唸るような相撲を取る。
多くの力士にとって脅威であり、教科書にもなり得る。そんな霧島の集大成ともいえる見事な内容だった。
千秋楽の貴景勝との相性は良い
霧島の明日の相手は貴景勝。
今日の貴景勝は、大栄翔を相手に正面からの相撲で圧力負けする結果となった。
貴景勝の圧力は結局戻っていない上に、霧島が相手だと踏み止まられた末に捕まえられ、身動きが取れないというパターンが多い。
綱取りが懸かった貴景勝としては意地を見せたいところではあるが、相性の面とコンディションの面でかなり厳しいことは確かだ。
霧島としてはある程度の圧力を掛けてくる貴景勝を相手に、大栄翔戦と同じように下がらずに応戦し、捕まえるかそのまま突き切るという普段通りの相撲を見せるというプランで行くことになるだろう。
その「普段通り」が果たして出来るのか。
優勝決定の一番でその「普通」が出来ないこともある。
ただ、実は貴景勝は優勝力士に対して意地を見せるという局面であまり良い成績が残せていないのでは?という疑問がある。これについては明日の7:30に検証した記事を紹介したいと思う。
イベント情報
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