2014年の終わりに、国技館のちょっとイヤな土産物「いやげもの」。大相撲観戦に行ったら、是非売店に足を運ぼう。
2014年、思えば様々なことが有った。
鶴竜横綱昇進。
琴欧洲引退。
豪栄道大関昇進。
逸ノ城の快進撃。
そして、白鵬32回目の優勝。
だが、本場所以外で圧倒的な存在感を示したのは彼らではない。
そう。
遠藤である。
永谷園のCMに始まり、遠藤パネルの登場。
国技館で一際大きな歓声を集めるのは、遠藤で間違いない。
優勝争いをしている時の稀勢の里に対する歓声も凄いが、
番付を上がりたての頃の遠藤に対する歓声はそれをも凌いでいた。
相撲人気の回復について、彼の果たした役割は確かに大きかった。
それを物語るように、遠藤に関するグッズは
場所を追うごとに増えている。
国技館の土産について私は「いやげもの」と評し、
これまで数回取り上げてきた。
特に遠藤グッズという意味で言えば、14年5月に紹介した通称
「遠藤煎餅」の威力が凄まじかった。
大判の煎餅に、シェルエットを一筆書き。
ザンバラ髪でもなければ、美しい四股でもない。
「これは遠藤なのだ」と思い込まなければ遠藤には見えない逸品。
遠藤人気で国技館に足を運んだライト層は、これを観て
腰を抜かして帰って行ったことだろう。
遠藤煎餅の凄さは瞬く間に知れ渡り、
なんと私の職場でも話題に出るまでに至った。
凄いな、相撲人気。
そして9月。
Ustream配信の相方の友人と「いやげもの」を漁りに
国技館の売店に足を運んだのだが、
驚くべきことに遠藤関連のグッズに変化が生じていた。
今までの作風が一変し、
素人さんにも手が出せそうなグッズが登場していたのだ。
売り切れ続出の遠藤ストラップは有名なので割愛するが、
例えばこの辺りなどは相撲土産に適していると感じた次第である。
◆商品No.1 大相撲 あぶらとり紙 あぶらとり紙の和のテイスト。
ここに何と、錦絵のテイストを組み合わせてきた。
おお、これは中々風流ではないか。
遠藤の和風な顔立ち。
そして、ピンクの着物が背景の白とマッチしている。
涼しげな表情もあぶらが取れた後にすら見える。
様々な商品が有る中で、遠藤に合った商品が
あぶらとり紙であろうとは、全く想像していなかった。
相撲ファンでなくても外で使える、
中々秀逸な土産である。
遠藤煎餅やあの高見盛皿といったレジェンド達が
遠い過去のように思える、素晴らしい出来栄えである。
こうして両国国技館も、若者がカジュアルに
大相撲観戦できる場になるのだと思うと、感慨深い。
いいぞ、相撲協会。
ただ、私は少し寂しくもあった。
3回もいやげものを特集し、散々笑わせてもらっただけに
大相撲協会のアレな部分も残っていてほしい。
そして、ご新規さんと共に大笑いしたい。
友人と私はショーケースを探した。
…居た。
いやげものが、やはり居た。
相撲ブームの最中、生き残ったいやげもの。
いや、生き残ったのではない。
以前は見掛けなかった、新しい商品だ。
まだあのセンスは生きている。
括目せよ。
◆商品No.2 遠藤タンブラー
暖かい飲み物を飲みたい時、いつでも遠藤に会える逸品。
タンブラーは保温性能が高いので、家で使うというよりは
職場など出先で使うものである。
ということは、衆人の目に遠藤が付くことになるのだ。
非常に難しいハードルである。
誰が観ても「え?」と思われない、洒落たセンスが必要になる。
ストラップのようにディフォルメするのか、
スタイリッシュに遠藤感を抑えて、
よく見ると遠藤というパターンで行くのか。
一番回避したいのは、もろに遠藤というパターンだ。
誰がどう見ても遠藤というデザインだけは避けなければならない。
いくら日本で野球が人気でも、ダルビッシュの写真がドーン!と
張られたマグカップを使われたのでは引いてしまう。
だからこそ、デザインには工夫が必要なのだ。
話が長くなったが、ではこの遠藤タンブラー、どのような出来栄えなのか。
早速見てみよう。
…
よりによって、ここでも錦絵。
ザンバラと髷姿の両方に出会えるのだが、
流石に衆人の目が気になってしまう。
何せ落ち着かない。
ザンバラ髪の遠藤の笑顔がこちらを見ているのだ。
せっかくの遠藤だが、私は目が合わないようにタンブラーを回す。
遠藤に会いたいはずで購入したタンブラーなのに、
会うことをこちらから拒否する。
何て皮肉な土産なのか。
ちなみに1650円であることを付け加えておく。
◆商品No.3 遠藤煎餅2
あの遠藤煎餅の、第二弾。
流石にシェルエットで語る遠藤煎餅は、店頭から姿を消した。
もう遠藤煎餅には当分巡り会えないと思いきや、
リベンジとばかりに間髪入れずに新商品を投入してきた。
手ひどく負けた翌場所、寺尾に吊り落としを決めた
千代の富士のような闘魂である。
失敗は繰り返せない。
繰り返すわけにはいかない。
絶対にここで名物になるような商品を産まねばならない。
そうでなければ、ほどぼりが冷めるまで煎餅というアプローチは
止めておけば良いだけだ。
だから、余程自信が有るのだろう。
私もそう思った。
そして私は、これを見てみた。
…
良くはなった。
前には進んだと思う。
シェルエットから、顔全体を描く形に進化したのだから。
目も眉も、鼻も口も特徴を捉えている。
問題は、煎餅特有の凹凸だ。
遠藤の顔は、しゅっとしたところに有る。
きれいな顔立ちであるところこそ、
この煎餅では再現しなければならない。
折角捉えた特徴が、煎餅の凹凸によって破壊されている。
残念ながら端正なはずの顔が、ゴツゴツして見えるのである。
シャープなアゴのラインが、
角度によって右曲りにも左曲りにも見える。
遠藤というよりは、同郷のスターの輪島に近い。
例えるならお札の目元を曲げて、変顔にしているあの現象が
この煎餅では再現されてしまっているのである。
2014年の国技館は、やはりアレな部分が残っていた。
2015年は一体どんな顔に会えるのか。
遠藤煎餅3でないことを、切に願う。