幕下付け出し制度変更は悪なのか。三段目格と資格の無い力士が上位で活躍する現状に思う。
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付け出しデビューの制度が変更される
大卒・実業団力士と高卒力士を対象とした付け出しデビューの有資格者に関する定義が変更されるというニュースが報じられた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/838848af89a5efe26a5f2368e37b305b3b0820e2
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日本相撲協会は28日、東京・両国国技館での理事会で幕下付け出し制度の改定を承認し、同日付で60枚目の最下位格付け出しへの一本化を決めた。2001年初場所から適用された10枚目格と15枚目格の付け出しは廃止。対象となる全日本選手権、全国学生選手権、国体成年の8強以上が有資格者で、有効期間は成績確定日から1年以内。 新制度ではこの3大会で16強以上、全国高校総体と国体少年の4強以上で三段目最下位格付け出し資格が与えられる。高校生の大会が対象となるのは初めてで、全日本実業団選手権は外れた。ある若手師匠は「優勝を逃しても資格を得られるのは大きい」と好意的に受け止めた。
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ニュース自体は9月場所が終わった後でのものではあるが、最近またクローズアップされてきた話でもあるので、今日はこの話について考えてみたい。
ポイントは大きく分けて二つある。
一つは、幕下10枚目格と15枚目格の付け出しデビューが廃止という点。
そしてもう一つが高校の大会が対象になったという点だ。
この点を考慮して言えるのは、大卒以上の力士にとっては下積み期間が長くなり、高卒力士にとってはこれが短縮されると言い換えられるということだろう。
これに関しては前者は否、後者は賛が圧倒的に多い賛否両論という状況だ。
最近の幕下10枚目格、15枚目格付け出しデビューはほぼ関取に
60枚目の最下位格付け出しへの一本化については、本当に批判が多いように思う。
これはもう、力ある力士の出世を遅れさせてしまうという点への否定的な見方が大半と言えるだろう。
そもそも力があって、現行の制度でも特に問題ないのにわざわざ割を食うような改変をするのは果たしてどうなのか?と言われるとこれに関しては返す言葉が無い。
SPAIAというウェブサイトで過去の付け出しデビュー力士の状況を取りまとめているものがあるので参考にしていただきたい。
https://spaia.jp/column/sumo/16688
これを見て分かるのは、基本的にここ10年ほどで幕下10枚目格、15枚目格付け出しデビューした力士は関取にはなっているということである。三段目格付け出しデビューですら特殊な事情が無ければほぼ関取にはなれている。
15枚目格で苦戦しているのは一昔前の力士が大半だ。当時からはアマチュアとプロの相撲が立ち合いなどの面から近づいてきているという話もあり、より大相撲に順応しやすくなっているという話も聞く。
出世の実績面を考慮すると、わざわざ下積みを伸ばすような改変は不要であるように思える。
三段目格付け出しデビュー組と付け出し資格の無い大卒の方が活躍している
ただ。
よく見てみると気付くことがある。
それは、三段目格付け出しデビュー組の方が、ここ10年では大きく出世しているということだ。
朝乃山は大関になっているし、若隆景は怪我をして現在は幕下に地位を落としているが、その前は大関候補の筆頭として名前を挙げられることが非常に多かった。
上位でも結果を残した豪ノ山も、そろそろ上位での対戦も見えてきた金峰山も三段目格付け出しデビュー組だ。
付け加えると正代についてはアマチュアでの実績が抜群だったにもかかわらず卒業の1年前に優勝を逃した影響から付け出しデビュー資格を有しておらず、序ノ口からのスタートとなった。
他にも北勝富士、翔猿、宇良といった上位で活躍する面々は付け出しデビューではない。
大きく育っている力士の多くが、実は下からのデビューだったということは特筆すべきことではないかと思う。
そしてもう一つ気づくこととして、ここ10年の15枚目格デビューの力士が幕内下位から十両での相撲が多くなっているという点が挙げられる。
大奄美、大翔丸、矢後、欧勝馬という顔ぶれを見るともっとやれたのでは?という想いもある。怪我の影響などもあるが、三段目組と付け出しデビューの資格が無い力士と比較すると、少し寂しいところはあるように感じる。
制度改変後、どのように推移するかを注視しよう
私は思う。
果たしてこれは、単なる偶然なのだろうか?
と。
そしてこの制度改変については、実は連動しているのではないだろうか?という想いも抱いている。
少し事例は異なるが、北の若がまだ幕下以下だった頃に、アマチュアでの実績を考慮すると伸び悩みを感じていた。変化をしたり、勝ちにこだわるために迷走している部分が見えたこともあった。
もう一つ挙げるとすると、矢後の怪我についても出世とプロへの適応のアンマッチが一因なのではないかと思うこともある。
プロの相撲への適応に時間を要すること、そして結果を求めるために相撲が荒れるというのは長い目で見るとあまり良くないことのように感じる。
こうしたミクロな事例と、マクロな実績という観点から考えると、もしかすると幕下10枚目格と15枚目格の付け出し見直しというのはこれからの有資格者に対して良い影響を及ぼす可能性があるのではないかと私は考えた。
これに関しては、今後の動向を注視する必要があると思う。現場の声や出世の実績を考慮すると幕下10枚目格と15枚目格の復活というのも視野に入れる必要があるからだ。
ただ、上記の事例を考慮すると、あながち「改悪」の一言で片づけられないのではないかと考える結果になった。
制度の改変が果たしてどのような結果を招くのか。
良い方に向かうことを期待したい。