2024年初場所14日目所感:立ち合い2度合わなかった琴ノ若が大一番に対応できたことが凄い
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琴ノ若はかつてない重圧の中の一番を迎えた
照ノ富士が不戦勝で、霧島琴ノ若が組まれた時点で2敗の琴ノ若は今日敗れると優勝が消滅する。
昨日照ノ富士に敗れたことは琴ノ若にとっては本当に痛かったんです。
13日目が始まるまでは単独トップだったというのに、2日で優勝が消滅するわけですからね。
序盤と中盤で各自何番か落としていましたけど、勝負どころで照ノ富士も霧島も敗れませんでした。
1敗と2敗の力士が13日目までトップを争う展開ですから、直接対決次第で一気に状況は急変するんですよね。
考えてみると番付上位の優勝争いは直接対決がこのタイミングで組まれるので、今の勢力図ゆえに起きたことと言えるのではないかと思います。
優勝もさることながら、大関昇進ラインを考えると1番も本割では負けられない。
琴ノ若はこれほど様々なものを闘うのは初めてのことだったはずです。
気持ちが前面に出ている琴ノ若
ですから、時間になった後の琴ノ若の表情が凄かったんですよね。
モンゴル人力士の若い頃みたいな感じの、顔に闘志がむき出しになっているような。あれを琴ノ若に観ることになるとは全く思っていなかったんですね。
だから、今日の琴ノ若はちょっと違うぞと思ったんですね。
この状況の乗り越えてしまうかもしれない。
そんな期待を抱いたんです。
ただね。
霧島の表情を見て逆の想像をすることになりました。
霧島、普通だったんですよ。
こうなると、気持ちが前に出ていることが果たしてよいことなのか?と考えてしまったんですね。
突っかけて空回りする琴ノ若
霧島は琴ノ若を相手に、先場所は頭を付ける形で完全に崩して勝ちました。
ですから、これだけ気持ちが前に出ているとということは受けて凌ぐ相撲を取ろうとしていないということを私は想像しました。
恐らく自ら積極的に攻めて、前に出て勝とうとしている。その気持ちが顔に出ている。
しかし琴ノ若は攻めて強い相撲を取り続けてきたわけではなく、どちらかといえば攻めを受けるか五分の攻防の中で崩して勝ってきた力士です。
そのため、攻めたところからスキが出てしまうのではないか?と想像しました。
取組前にその不安は出ます。
琴ノ若が2度突っかけてしまったのです。
これは大変厳しいと思いました。
気持ちが前に出ている力士が、空回りしそうな様子が出てしまっていたからです。
立合いが合わないところから、霧島ペースに進むことが容易に想像できました。
それでも柔軟に対応し、霧島に勝った
その予想は的中します。
突いてくる霧島を琴ノ若が受ける流れになりました。
しかしここからの琴ノ若が冷静で、一転反撃に転じたところで霧島が弓なりになり、前に出てきたところを引いて態勢を崩し、勝負ありました。
琴ノ若としては、本当はこのような相撲を取る想定ではなかったはずです。
しかし、流れの中で霧島が攻め、それを受ける展開になった。琴ノ若はそこから反撃して、霧島を崩し切った。
これほど重圧がかかる中で、想定していない展開で、持ち前のやわらかさと攻めの姿勢を見せることで難しい状況を乗り切れたのですから、さすがに声が出てしまいました。
良い力士であることは間違いありませんが、これだけの極限状態のなかで勝てる力士になれた。それが何よりも素晴らしかったと思うんです。
我武者羅につかんだわけでもないし、無欲で得たものでもない。
相応の重圧を真正面から受けざるを得ない状況に身を置きながら横綱が懸かる力士を相手にこれが出来た。
明日は翔猿が相手です。今日の難しさとはまた別の難しさを感じながらの相撲になるかと思いますが、今日のように乗り越えるところを期待しています。