朝乃山の復帰戦に貴景勝を当てるのは冷遇なのか調べてみた
Contents
朝乃山は復帰後かなりついてない
朝乃山が8日目から復帰する。
ふくらはぎの肉離れの影響もあり初日から休場していたが、ここに来ての復帰。
8日目からの幕内上位での途中出場というのはあまり記憶にないところだが、番付を落としたくない、極力出場したいという気持ちは分かる。
1年休んで戻ってきて、ようやく上位総当たりというところで肉離れ。
本当についていない。
復帰後の朝乃山は本当についていないのだ。
幕下、十両では思わぬ躓きがあり、幕内復帰が遅れた。幕内に復帰したらこの休場である。
そして、復帰後の初戦は綱取りを賭け、もう負けられない状況の貴景勝。
なんとついていないことか。
「朝乃山は協会に冷遇されているから、初戦に貴景勝を当てられた」のか?
そしてこんな不満の声を上げる人すら現れている。
「朝乃山は協会に冷遇されているから、初戦に貴景勝を当てている」
「貴景勝の綱取りを支援するために、本調子ではない朝乃山の初戦に当てた」
私自身、あまり用例が無いことでもあるし、その不満の声が果たして妥当なものなのかは調べてみないと分からない。
基本的なこととして、上位総当たりの割というのは、番付最上位の力士が小結から下の番付の力士を順に当てられる。
例えば今場所の貴景勝であれば、北勝富士、正代、宇良、明生といった具合に少々順番は前後するが徐々に番付を下げて当てられている。
逆に西小結の北勝富士であれば貴景勝から順にこれも少し順番は前後するが基本的には上位から当たるような格好だ。
つまり、上位の力士は小結以下を順に、下位の力士は最上位の力士から順にという形で割が組まれる。
これが、割の基本である。
途中出場の場合は、最上位から順に当てられる
ただ、途中出場のケースに関してはどうなのだろうか?
そこで有識者に尋ねてみた。
すると「ローテーション通り」という答えが返ってきた。
つまり、朝乃山であれば最上位力士から順に当てられるということだ。朝乃山から見て今場所の最上位力士が誰かといえば、貴景勝である。基本的にはその後は徐々に下の力士に当たるという寸法だ。
なるほど。
考え方としては、途中出場であっても上位から当たるということであれば、これはもう仕方がない。
ということで、私は過去の事例を確認することにした。
直近の8日目からの出場事例で言えば、平成29年秋場所における西前頭2枚目の碧山だ。この時の8日目以降の対戦相手を見てみよう。
なお、この場所は3横綱2大関が休場という場所なので、11日目まではまさしくローテーション通りということになる。
以降は星が上がらないという事情もあり、対戦相手がローテーション通りという訳ではないが、少なくとも復帰時に上位から順に当てられるという原則通りということがよく分かる。
更に、だいぶ前のことではあるが、平成元年春場所の東前頭筆頭若瀬川の事例を見てみよう。
少し崩れてはいるが、共通しているのは最上位力士が初戦であり、上位力士が当てられているということだ。
大きな枠で見ると、30年前であってもそんなに方針は変わらないということが分かる。
確実に言えるのは、朝乃山の初戦に貴景勝を当てたのは30年形の変わらぬローテーション通りの割ということだ。
嫌味な言い方になるが、朝乃山の冷遇でもなければ貴景勝の厚遇でもない。大事なことなので、このような言い方になったことをご容赦いただきたい。
朝乃山は明日貴景勝と組まないと、今場所貴景勝との対戦が見送られることになる
ただ、では何故このような割になるのか?という点を疑問に思われる方も現れるのではないかと思う。
つまり、復帰後の力士にいきなり上位から当てるのはローテーションとはいえ、そのローテーションがおかしいのではないか?という主張だ。
割を崩して同じくらいの地位の力士から当て、上位とは後で当てるというのも一つの手ではないか?ということについても考えてみた。
あくまでも私の考察ではあるが、仮に崩すとすると大きな弊害が生まれる。
それは、横綱や大関といった力士たちは終盤で上位同士の取組が基本的に行われることになるということである。
例えば今場所の貴景勝を例に取ると、現在上位では阿炎より上の6人の対戦が残っている。言い換えると、10日目以降はその6人と対戦しなくてはならない。
そうすると、仮に明日もしくは9日目に貴景勝が別の力士との対戦になった場合、朝乃山は前頭筆頭でありながら貴景勝との割が組まれないという事態が発生する。
番付が上位の力士は大関や関脇といった実績ある力士達と闘う権利を有していながら、ローテーションがおかしいという主張を通してしまうとその権利が放棄されてしまうということになる。
余談だが朝乃山が貴景勝と対戦するには、9日目までに復帰しなくてはならなかった訳だ。ギリギリ貴景勝と闘えるタイミングで戻ってきたとも言えるだろう。
罵声を止めて、相撲という共通の趣味を楽しもう
少々苦言めいたものというか、自戒の意味も込めて蛇足ではあるが続けたい。
最近大相撲ファンの間でSNSが大変荒れている。
豊昇龍の立ち合いの件も然りだが、物議を醸す事態が発生すると自分の見解について言葉を選ばずに発信されている方が非常に多い。
意見を持つことは自由だ。
ただ、この発信には二つの問題がある。
一つは、その見解に誤りがある可能性も存在していることだ。
今回の「朝乃山の冷遇」という主張については調べてみればローテーション通りということであり、その主張は正しくはない。仮にそのように主張した方は、冷遇のだと誤認してしまったということに向き合わねばならない。
発信する前に一度立ち止まり、正しいか否かをまずは確認してほしい。それだけで荒れずに済むのだ。
そしてもう一つは、仮にその主張が正しくても不快に感じる人が居るということだ。
SNSは文字のコミュニケーションであることから、対面で話すよりも言葉が刺激的であり、受け止めた人が傷ついたり怒りを覚えたりしやすいという特性がある。
非常に単純な話だが、自分が主張することによって誰かが傷つくとしたら、それが正しくてもその発信はしてもいいのだろうか?
特に大相撲界隈のSNSは、SNS慣れしていないシニアの方が数多く存在しており、そうしたネットの特性を理解しないまま誰かを傷つけている。
そして、言葉が強烈なので、誰も鈴を付けてくれない。当たり前だ。そんな面倒な人物になど誰も関わりたくないし、敵など作りたくはない。
こうして相撲界隈のSNSは荒れ放題になる。お分かりいただけただろうか?
我々はいい歳の大人だ。
趣味のフィールドでいがみ合うのは止めようではないか。
相撲という共通の趣味を楽しもう。
そこに罵声は要らないのだ。
イベント情報
①11月25日 17:00 大相撲メタバース場所
メタバース空間で大相撲14日目の幕内後半の取組をパブリックビューイングします。
3回目のイベントですが、メタバースきっかけで普段相撲を見ない方に大相撲が届いてきていてビックリしています。
メタバースだとちょっと・・という方にはVoicyとYouTubeでも配信を行いますので、後日案内いたします。
メタバーズの入り方、下準備についてYoutubeで動画が作られていますので紹介します。是非ご覧ください。
https://youtu.be/HdSsme7cTok?si=23ok8hn0TerOLcUY
②12月16日 18:00 大相撲トークライブ(錦糸町すみだ産業会館)
データで振り返る2023年の大相撲を横尾さんと行います。今回のゲストはなかなか面白いですよ。え!?そんな話聞けるの?って方をお呼びしています。
予約サイトはこちら。